一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

新着細胞生物学用語集(2011-10-03)

RNA局在
【RNA localization 】
入江 賢児
筑波大学大学院人間総合科学研究科(基礎医学系)分子細胞生物学グループ
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「RNAの局在化」とは、核内で転写されたRNAが細胞内の特定の場所に存在する現象です。RNAの局在化により、細胞内では情報の偏りが生じ、細胞の極性が生まれます。生物の遺伝情報は、遺伝子の本体であるDNAからRNAに写し取られて発現します。そのため、RNAの局在化は、遺伝子発現を空間的に制御するための重要な現象です。図の説明 (1) 局在化するmRNAはジップコードと呼ばれる局在化シグナルをもっている。ジップコードはmRNAの3’非翻訳領域に見られることが多い。
(2) ジップコードにRNA結合タンパク質が結合する。
(3) ミオシンやキネシンなどの分子モーターがRNA局在に使われる。
(4) mRNAとRNA結合タンパク質は分子モーターとともに、巨大なRNA-タンパク質複合体を形成する。
(5) 輸送されるmRNAの翻訳は抑制されることが多いので、巨大なRNA-タンパク質複合体には翻訳の抑制因子が含まれる。
(6) RNA-タンパク質複合体はアクチンケーブルや微小管などの極性化した(方向性をもった)細胞骨格上を輸送される。
(7)と(8) 輸送されるmRNAは局在化部位に係留され、そこで局所的に翻訳される。
参考文献
1;Moving messages: the intracellular localization of mRNAs. St Johnston D. Nat Rev Mol Cell Biol. 2005 May
6(5):363-75.

RNA制御
【RNA regulation】
入江 賢児
筑波大学大学院人間総合科学研究科(基礎医学系)分子細胞生物学グループ
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遺伝情報はDNAからRNAを経てタンパク質として発現される。 生物の持つ複雑で巧妙な形態・機能の獲得には、RNA段階での 遺伝子発現制御プログラムが重要な役割を果たす。すなわち、 個体発生の過程において、様々な「1.非対称性制御プログラム」 により、単一の受精卵から非対称な細胞群が生成され、「2.多様 性獲得プログラム」(選択的スプライシング)により、分化過程で 形成される細胞が担う多様な機能の獲得に必要な遺伝子産物 自体の多様性が獲得される。さらに、「3.品質保証プログラム」 による厳密な監視により、RNAレベルでの制御の正確性が保証される。

参考文献
1;蛋白質核酸酵素 2009年12月増刊号 mRNAプログラム。

非対称分裂
【Asymmetric cell division】
入江 賢児
筑波大学大学院人間総合科学研究科(基礎医学系)分子細胞生物学グループ
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細胞分裂によって2つの異なる細胞を生じるような細胞分裂。非対称分裂は細胞の多様性を生みだす基本的なしくみである。個体発生の過程では、少数の未分化な前駆細胞(もしくは幹細胞)が細胞増殖を繰り返し、特定の機能や構造を形成する細胞集団が形成されていく。非対称分裂は、このような過程で、細胞内の非対称性や細胞外の微細環境(ニッチ、niche)に基づいて、未分化な細胞からより分化した細胞を生じるメカニズムである。
参考文献
1;Mechanisms of asymmetric cell division: two Bs or not two Bs, that is the question. Horvitz HR, Herskowitz I. Cell. 1992 Jan 24;68(2):237-55.

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