一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

2016-10-20 大隅良典先生おめでとうございます

内山安男 (順天堂大学医学研究科)

大隅先生、ノーベル賞受賞おめでとうございます。先生がノーベル賞を受賞されることは当然と考えておりましたが、受賞が決まり何かほっとした感じが強く残りました。大隅先生を順天堂大学の客員教授にお迎えすることができ本当に良かったと思います。先生のノーベル賞受賞のニュースが流れた翌日、NHKのローカルニュースの取材申し込みがあり、オートファジー研究会の仲間と共に大隅先生の受賞を実感いたしました。

大隅先生のお話を初めてお聞きしましたのは、1994年仙台での日本細胞生物学会大会でのシンポジウムでした。出芽酵母において、オートファジーによって誘導される液胞内のオートファジー小体の形態を美しい電子顕微鏡写真を示しながら説明されました。液胞のプロテアーゼ欠損株や飢餓を負荷した条件で解析することで、たくさんのオートファジー関連遺伝子(APG)を採取されました。その当時は、大隅先生がクローニングされたたくさんのAPG遺伝子の役割については未だ不明でした。しかし、大隅先生が見出した14個のAPG遺伝子や出芽酵母で見られる現象は、オートファジー研究が形態学的なアプローチが主であった時代から分子細胞生物学の時代に変わる契機になったことは明らかでした。さらに、出芽酵母がオートファジー研究を始め多くの細胞生物学的な解析に重要なツールとなることを再認識することとなりました。

大隅先生は、1996年に東大の教養学部から岡崎の基礎生物学研究所に移られた。この時期から大隅研究室は多士済々な若い人達が集まり、酵母APG遺伝子情報を元に哺乳類でのオートファジーの解析が始まりました。この当時、大隅先生のもとに集まった若い人達が、生き生きとして討論し、研究を進めてく姿にいつも感心していました。出芽酵母から出発したオートファジー研究を哺乳細胞で研究展開し、次々と新事実を報告し、正に分子レベルで哺乳類のオートファジー研究が始まったわけです。オートファゴソームのマーカータンパク質(LC3)の同定とC末端のリン脂質修飾、オートファゴソーム膜の由来の検討、オートファゴソーム形成へのスイッチ等、これまでに考えられなかった現象を分子レベルで説明する研究が、若々しい大隅研の研究室を中心に、世界中から沸き起こってきました。この時期に大隅先生が企画されたオートファジー/リソソーム研究会に私達もエントリーし、その後、毎年参加することになりました。こんな中、大隅研を中心とした素晴らしい研究が火付け役となり、オートファジー研究の第1回国際学会(International Symposium on Autophagy、ISA)が開催されました。この第1回ISAは1997年11月初旬に、世界中からオートファジー、リソソーム、分解に関わる細胞内シグナル伝達系の研究者が岡崎のカンファレンスセンターに集まりました。当時集まった研究者の多くは、純粋のオートファジー研究の人達ではありませんでした。最終日のバスツアーの後の温泉では、外国人研究者もダウンするほど飲み明かし、大隅先生の旗揚げ研究会には似合っていたかもしれません。ISAは回を重ね、岡崎、大阪、三島、琵琶湖、沖縄と続き、来年は奈良で開催されます。日本での開催の間にヨーロッパ、アメリカ、中国でも開催され、参加人員も開催されるごとに増え、300人を超える(半数以上が外国人)研究会に発展しています。

細胞内の分解系、特にタンパク質分解は、大隅先生の研究がブレークする前から都立臨床研、東大の分生研や東京都老人研で活躍された故鈴木紘一先生が中心になって、文科省の総合A研究班から出発し、重点領域研究の研究班“タンパク質分解のニューバイオロジー”が作られました。この班は、鈴木先生のカルパイン研究、東京都医学総合研究所理事長の田中啓二先生のユビキチン・プロテアソーム研究、順天堂大学前学長の木南英紀先生のリソソームカテプシン研究が中心となって進められました。その後、この研究班は大隅先生のオートファジー研究のブレークとも重なり、“タンパク質分解:新しいモディファイアーによる制御”、として特定領域研究のもとに発展を遂げました。この細胞内タンパク分解研究の流れを汲んで、大隅研出身の若い先生方が中心となり同様の研究会を立ち上げました。現在もこの研究班は継続し、大隅先生を中心に、日本のオートファジー研究の中心的な人達が活躍しています。と同時に、オートファジー学会も正式にこの研究班と並列して毎年開催されている。これは、開かれた研究会として若い研究者を惹きつける効果もあり、ますます発達するものと思われます。特に、今回の大隅先生によるノーベル賞生理学医学賞の受賞がさらに後押しとなることが期待されます。

最後に、琵琶湖での第5回ISAの研究会の懇親会の折、隣にそわったテキサス・ダラス(当時はコーネル大)のBeth Levineが、Ohsumiはノーベル賞をもらうか、と聞いてきました。当然もらうよ、と答え、Bethはどう思うか?と尋ねました。誰ともらうかが問題だ、と微妙な答えでした。あれから7年経ちました。1993年のTsukada M and Ohsumi Yによる“Isolation and characterization of autophagy-defective mutants of Saccharomyces cerevisiae.”(FEBS Lett)の論文から23年でノーベル賞、細胞の非常に根源的な現象を解き明かす出発点となった研究はやはり非常に価値があります。繰り返しになりますが、大隅先生おめでとうございます。


2006年10月第4回ISAが開催された三島にあるTORAYのカンファレンスホールで

2006年10月第4回ISAが開催された三島にあるTORAYのカンファレンスホールで


(2016-10-20)

日本細胞生物学会賛助会員