一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

第65回日本細胞生物学会ランチョンワークショップ「育児をしながらのキャリア形成」

開催日

2013年6月21日(金)12:25-13:15

講師

渡辺裕子(明治学院大学・教養教育センター)

司会

藤ノ木政勝(獨協医科大学)

今回は講師に渡辺裕子教授をお招きし、「育児をしながらのキャリア形成」というタイトルで、そのご経験をお話しいただきました。たくさんの方に集まっていただき、盛況に行うことができました。
先生のお話の中で、非常に印象的であったのは育児をしながらキャリア形成を図るには、ありきたりかもしれませんが、まずは周囲の人の理解と援助ということでした。指導教官のスタンスや家族をはじめとする身近な人たちの理解と協力といったことです。大学院在籍時に妊娠が分かったそうですが、そこでもし指導教官が受け入れを拒否すればそこでキャリア形成は終わってしまいますし、また子供が生まれても代わって面倒を見てもらえる状況がなければ、同様にその時点で終わってしまいます。その時の場面ごとにタイミングよく助けてくれる人が現れる巡り合いがあり、そういう正の循環が重要なのかなと感じました。もっとも渡辺先生が得られた正の循環は、何時でも誰でも得られるとは限りません。そういう意味では非常に運が良かったともいえます(運も実力のうちとも言いますが)。では、全く同じではなくても何かしらの正の循環が得られる様な仕組みを考えることはできないものでしょうか?フロアーからの意見で、部下の女性に産むなとは言えないけれど休まれてしまうと研究はもとより研究室そのものが立ち行かなくなってしまうし、今の業績主義の中ではなかなか難しいという発言がありました。おそらく集まった多くの人が同じような事を感じた事と思います。確かにそれは一つの真実だと思います。では部下の女性が産休・育休をとっても立ち行かなくならない方法はないものでしょうか?ないと思ったらそこで思考は停止してしましますし、何も知恵は生まれません。あると答えを決めて考えることを始めれば、できることは見つかるのではないでしょうか。例えば発想を変える事だけで、変えられる事もあるのではないかと思います。古い機器を新しいハイスループットのものに入れ替える事やロボット化する事に予算をつけ、同じ実験が早く終わり早く帰宅できるようにする(で、一日に2回実験が出来ると思ったら元の木阿弥ですけど)事は、一例になるのではないでしょうか。また過度な業績主義を是正する事もやろうと思えば直ぐに出来る事はないかと思います。最後にフロアーの男性から、保護者会の会長をやり、その時は研究時間が短くなったがメリハリが効き、また気分転換にもなってその時の研究がネイチャーに載ったという発言がありました。必ずしも時間増=業績増ではないという事です。
ワークライフバランスをどうとるか、ウェットな実験をやっていては無理という発想を止め、やれるように出来る所から修正していこうと考え始める契機になれば良いと思います。今回はある意味全く正反対に位置する文系の研究者の例を見る機会を設けてみました。その対比の中から考えるポイントが出てきそうに思います。そして、若い人たちにライフイベントを迎えた時に研究とどっちを取るかという二択ではなく、どっちも取れるという選択も場合によってはあるという事を知ってもらえたら目的の半分は達成したように思います。さらに、ワークライフバランスやライフイベントへの考え方などをラボや分野を選ぶ時の重要な基準にしてもらえたら、それがプレッシャーになって状況が変わるかもしれません。 文責:藤ノ木政勝(獨協医科大学)

ワークショップアンケート結果

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