形態学関連
國井 政孝
大阪大学医学系研究科細胞生物学教室
概要・原理
凍結包埋は包埋の際に加熱や有機溶媒による脱水を行わないため、抗原の反応性が失われにくいという利点がある。 凍結の際に氷晶が生じるのを防ぐため組織をsucrose溶液で置換した後にO.C.T. Compoundに組織片を包埋し、液体窒素で冷却したイソペンタン中で凍結する。
装置・器具・試薬
器具
金属のカップ
コルク片(ワインのコルクを薄く(1-2mm厚)切ったもので可)
クライオチューブ
試薬
【fig.1】
sucrose / 0.1M phosphate buffer (4%, 10%, 15%, 20%)
O.C.T. Compound(Sakura Finetek)
isopentane(nacalai tesque)
詳細
- 組織片をsucrose溶液に浸け、氷晶防止処理する。Incubationは4度で行う。 4% 15分、2回 → 10% 30分 → 15% 30分 → 20% 30分 → 20% オーバーナイト
- 発泡スチロールに液体窒素を入れ、isopentaneを入れた金属のカップを冷やす。【fig.2】
- 5 mm角に切ったコルク片(裏側には組織名を書いておく)の上にO.C.T. Compoundを出し、組織をのせる。【fig.3】 薄切面が上側になるのを考慮し、組織を置く方向に注意する。
- 組織を下にして、isopentaneの中へ入れて数秒おき、組織を凍結する。【fig.4】 凍った組織はすぐに液体窒素に移す。
- 凍結した組織はクライオチューブに入れて液体窒素中で保存する。【fig.5】
工夫とコツ
凍結の際、気泡が入ると薄切に支障をきたすので気泡が入らないように注意する。 ; 液体窒素で保存したサンプルと―80度で保存したサンプルを比べたことがあるが、前者の方が抗原の保存が良いようである。
fig4 isopentaneは冷えると粘着性が上がるので、一度全体を凍らせてから、液体窒素から引き上げて室温で解けるまでの間、液体部分にサンプルを入れて凍らせる方がやりやすい。組織は凍ると白くなるのですぐにわかる。
sucrose溶液に入れる時間は組織にsucroseが浸透して沈むのが目安。だが長くても1晩あれば浸透するので、それ以上置いても時間の無駄。
参考文献
井関祥子、太田正人 編集 実験医学別冊 免疫染色・イメージングのコツ 羊土社