一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

細胞生物学用語集【U-X】

【V】

ビンキュリン
【vinculin】
木岡 紀幸
京都大学大学院農学研究科
アクチン繊維と結合し、主に、細胞外マトリックス-細胞間の接着装置である接着斑(focal adhesion)と細胞-細胞間の接着装置であるアドヘレンス・ジャンクション(adherens junction)の両方に存在するタンパク質。ビンキュリンは頭部と尾部およびそれらをつなぐリンカー領域からなっており(図)、尾部にはアクチンが、頭部にはタリン(talin)やαカテニン(α-catenin)が結合する。タリンなどのタンパク質との相互作用を介して、ビンキュリンは接着斑の成熟やその接着強度に貢献している。リンカー領域にも細胞増殖シグナルに関わるビネキシン(vinexin)やインスリンのシグナル伝達に関与するCAP/ポンシン、アクチン重合の核形成因子Arp2/3が結合する。ビンキュリンとアクチンなどの結合タンパク質との親和性は頭部と尾部の分子内相互作用により低く抑えられており、分子内相互作用の解離に伴いその親和性が著しく増大する(活性化)。この活性化の仕組みは現在論争中であるが、複数の結合相手が同時にビンキュリンに作用することが活性化を引き起こすという「組合せモデル」が有力である。また接着斑でのビンキュリン-タリン結合およびアドヘレンス・ジャンクションでのビンキュリン-αカテニン結合が細胞内張力によって調節されることから、ビンキュリンはメカノトランスダクション(mechanotransduction)にも関与していると考えられている。
参考文献

日本細胞生物学会賛助会員

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