2025年度も終わろうとしている。昨年度に引き続き、今年度の、日本細胞生物学会の英文学会誌・Cell Structure and Function (CSF)の宣伝活動を振り返ってみたい。
国内(7月15-18日)Joint Meeting of JSCB 77th & JSDB 58thと去年のアメリカ
まず、名古屋の年会では、初の試みとして、松田編集長・水島学会長による「CSF論文レビューの作法」と題したランチョンを開き、立ち見が出るほど盛況だった。今回は、日本発生生物学会との合同年会ということで、学会誌も一緒に盛り上げていこう!と協同してブースを出した(図1)。お菓子・飲み物、発生生物学会のきれいなクリアファイルの配布などもあり、たくさんの人が来てくれた。

このような宣伝活動は楽しくもあり充実感があるが、効果はあるのだろうか? そこで、CSFの記事アクセス数を解析したところ、2024年12月にアメリカで開催されたCellBio2024の後の2025年では、アメリカ、中国、イギリス、ブラジルなどで劇的にアクセス数が伸びており(図2)、ただの偶然という可能性もあるが、一応の達成感を得た。同時に、日本からのアクセスは変化なし、ではあるのだが、既に学会員には周知されているのだろう。しかし、これまでCSFへの投稿が無かった研究室からの投稿があるなど、効果はあったと判定している(恣意的であることは否めないが…)。年会に加えて、生化学会や分生など国内の様々な学会でうちわを配布したので、今後はその効果も期待だ。ちなみに、今年度宣伝のために作ったのは、49巻の表紙の多色蛍光画像の紙製うちわである。裏は名誉会員の先生方の顔写真付きなので、捨てたりしたら罰が当たりそうだと、大切にしてくれることを祈りつつデザインした。
そんな訳でアメリカでの宣伝効果に気を良くした我々は、もっとアジア諸国に目を向けるべきではないかと、2025年は情報があり、日程的に参加可能な、韓国とインドに行ってみた。

韓国(9月29日-10月2日)KSMCB2025
韓国でPIをされていて、CSFのInternational Editorでもある小曽戸陽一博士に伺ったところ、Korean Society for Molecular and Cellular Biology (KSMCB)がよいだろうとのことだった。会員数は、1.8万人と大人数なうえに(JSCBは1000人に満たない)、6割が大学院生とのこと。今年の会場の済州島(お茶と蜜柑のリゾート地)へは、かつては東京からも直行便が出ていたらしいが、今は関空から1日1便のみ。到発着時間はちょうどよく、会場へはバスの移動で便利であった。会場は大きく(6-7会場、160口頭発表、1000ポスター)(図3)、日本の分生のようだ。

疾患に関連した課題が多いと感じたが、手法は幅広く一通りカバーしている感じ。ランチョン以外の講演は英語であり、ポスターも英語表記だ。プレナリーでは欧米のスター研究者4人の講演があった。シンポジウムにはちらほらと日本人研究者もご招待されているようであり、中国からの参加も多い。懇親会は全員参加(学会参加費300USDに含まれている)で、学会誌(Molecules &Cells)の論文賞の表彰もあった。日本は既に名目GDPで韓国に抜かれており、会場や会費、研究内容をみても豊かさがあり、投稿料の安さでは引き付けられないと、個人的には感じた。
ブースを出すために業者枠で登録して…というのは、これまでと同じシステムであり、難しくはなかったが、ハングルがハードルを上げた。アメリカの方が簡単だった。韓国は近くて遠い国だと実感する。日本の学会に参加する海外の人もこんな気持ちなのだろう。事務はとても親切で、メールは英語にしてくれる。しかし、募集要項や申請書はハングルなのでCopilotに投げて訳してもらうのだが、余分な情報を勝手に追加するので、「提示した文章だけ訳して!嘘は言わないで!」とAIにマジギレな日々であった。一番の難所は、ブースの場所を決めるZoom会議で、名前を呼ばれたら希望の番号を言う、という流れ。話されていることが何一つわからない。事前に私の名前は英語で呼んで、とお願いをして、何とか希望の場所が取れた。
ブースの組み立ても順調で、学生さんがたくさん来てくれた。クレヨンしんちゃんとか、あたしンちとかのアニメを見て育ったという。ただ、スタンプラリーで来るので、何のブースか聞かれもしない点が不安ではあった。日本企業の出展は(恐らく)無く、唯一Nikon支社の人が挨拶に来てくれた。会場は暑かったので、うちわも使ってくれていた。但し、事前に会場に送ったはずのうちわ数百枚は韓国の郵便局で止まってしまい、行方不明のままである。
宣伝効果はあったのか?上述のアクセス数を月別に見てみると、学会後の11月は急上昇であった(図4)。10-12月の論文アクセスでは、韓国からの総説が連続2位をキープしており、あとは引用や投稿数が増えるのを待つのみである。

インド(12月7-9日)48th All India Cell Biology Conference and Symposium
次いで、インド。気が付いたときには、締め切りが過ぎていたのだが、厚かましくも事務局にメールしてお願いしたところ、参加が認められた。メールを交わしていくうちに、大会長のS. Ganesh教授と私が、同時期に理研と京大にいたことがわかり、親しみがわいた。招待講演者と同等の扱いにしてくれ、ややビビるのだった。
CSFは海外のコンサル会社に相談しながら国際化を進めているが、コンサルはインドに懐疑的であった。しかし、Indian Society of Cell Biology(ISCB:インド細胞学会)はWebが充実しており、質の高いサイエンスをしているように見えた。とはいえ、これまでインドからの論文は、2012、2016、2020、2023、2024年にそれぞれ1編づつ投稿があったものの、全てRejectという不安材料もあった。ちなみに、2025年もReject 1報だったが、学会後には初めての受理論文が出た。嬉しい。今後も続いて欲しい。
デリーまでは羽田から直行便が出ており、会場のKanpur(地名)へは国内便で1時間程度。デリー空港近くのホテルに泊まり、翌日現地に行く計画だった。夜、なんとなく目覚めると、明日の飛行機は飛ばない、というIndiGo(格安航空会社)からのメールが来ていた。急遽近隣のLucknow(地名)への飛行機を、Air Indiaで取った。この時残り4席のギリギリ。Lucknowでは学会がタクシーを用意してくれており、2時間程度で会場に着いた。帰りも飛ばないかもしれない…との学会事務のアドバイスで、デリーへの7時間のタクシーの旅であったが、高速道路はほぼ真っすぐであり、快適だった。
会場のインド工科大学(ITT)は、インドに23校ある国立大学であり、Kanpurは3番目の設立とのこと。街中は喧騒がすごいが、キャンパスは入場制限があり、静寂に包まれており、夜に一人で歩いても安全である(但し野良犬が怖い)。参加者はキャンパス内の宿泊施設に泊まり、会場へは徒歩かオートリキシャで向かう。昔は軍用だった、生花が飾られたレンガ造りの講堂でみんなで同じ話を聞く。ポスターや企業展示は屋外でコールドスプリングハーバーのミーティングのようだった。CSF宣伝ポスターも、貼ってくれた(図5)。食事も屋外であり(図6:白い布の向こうが食事会場)、3食カレーのブッフェだが、毎食メニューは違い、飽きない。休憩時間には、チャイやマサラ味クッキー、パコラが供され、コーヒーもあったが、コーヒー牛乳だったのが衝撃だった。2日目の夜は民族舞踊ショーがあり、夕食もちょっと良いものが出る。アルコールはない。そういうのもいいものだと感じた。


参加人数は400人程度で、学生・ポスドクが300人とのことだった。非インド人は私一人のようだったが、皆さん親切且つ寛容で、事務も発表も全て英語で、不自由を感じなかった。受賞・招待講演34題と学生トーク20題で、ポスターは2日間で250題。招待講演者の多くは、PNAS、Nat Commun、JCB、JCSなどに発表した成果を話していた。学会後にはITTのラボで、人数限定で超解像顕微鏡技術講習会があったようだ。企業展示は25件で、ここでもNikon支社がブースを出しており、2光子顕微鏡なども売れているとのことだった。
インド細胞生物学会は、1975年に設立で、元々は細胞診(病理診断の一つ)からのスタートした学会とのこと。委員会メンバー18人のうち女性は10人で、学会長も女性である。表彰された学生のほとんどは女性であったことも印象に残った。聡明だ。学会誌はないが、ニュースレターはWebで閲覧可能で年2回発行されている。日本の「生化学」のような感じで、ミニレビューが数編載っており、他に、会長や役員の言葉、学会サマリー、受賞者紹介などが載っている。JCSのインド人研究者のインタビュー記事の再掲もある。学会とは直接関係はないが、Springer Nature系で紀要(Proceedings of the Indian National Science Academy、2025年9月で91巻)がある。工学・医歯薬・コンピュータサイエンスなど範囲が広く、原著が少しで、総説がほとんど。依頼があれば書くとのことだ。
終わりに
毎回の旅費は、学会や国際情報発信強化の科研費からの支出ではないが、ブースには費用が掛かり、労力もいる。学会参加での効果は立証されたが、ニュースレターや学会誌に広告掲載するだけでも、ある程度は周知効果があるのではないか、と思った。また参加するだけでは継続的な関係は結べないようにも感じた。会員の皆さまのアイデアも募集したい。csf@nacos.comまでご連絡ください。
修士・博士に進学したからには、研究職に就くかどうかは関係なく、学生の間に一度は海外の学会で発表出来たらいいのにな、と思っている。韓国やインドの学会に参加したのは今回が初めてだったが、両学会とも、英語が主言語であり、若手を育てるという熱い気持ちと工夫を感じた。自分の研究成果を知ってもらい、異文化を体験するのが目的であれば、円安が続く今、嵩む飛行機代を出すのが難しい場合など、必ずしも欧米でなくてもよいのではないか。海外学会参加の選択肢の一つとなると思った。全てが最先端だったとは言わないが、ディスカッションスキルやサバイバル力も高まるだろう。
謝辞
日本発生生物学会の学会誌、Development Growth & Differentiationの上野直人編集主幹、倉永英里奈委員、桃津さんには、年会でのブースで大変お世話になりました。ランチョンでは若手の会のメンバー、ブースでは京大・青木研の学生の皆さんが頑張ってくれました。北大・大場さん、愛知がんセンターの小根山さん、兵庫県立大の吉田編集委員にもたくさん助けて頂きました。小曽戸博士および小曽戸研のShinさんにも、郵便の行方を捜してくださるなどのご親切に感謝しています。
いつものごとく自由度高く任せてくれた松田編集長、韓国への送金を含めたもろもろの事務をして頂いた永盛さん、執筆の機会を与えてくれた青木さん・水島会長、飽きることなく、工夫して楽しんで準備してくれた中山さん・水落さんの2人の技術員にも感謝いたします。
2026年2月1日
金沢医科大学 清川悦子(CSF編集委員)