一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

CNBr-activated sepharose を用いた抗原タンパク質のカップリング及び抗体のアフィニティー精製

author吉村 信一郎
所属大阪大学医学系研究科細胞生物学教室
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Published2011-08-20Last Update2011-08-20
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概要・原理

臭化シアン (Cyanogen bromide, CNBr)-activated Sepharoseは高分子のリガンドを結合させるのによく用いられる担体である。タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸は穏やかな条件下で一級アミノ基または類似の求核性官能基を介してCNBr-activated Sepharoseにカップリングする。カップリング反応は自発的で、特別な試薬や装置を必要としない。反応の結果リガンドは担体から加水分解されなくなり非常に安定に結合を保つことができる。そのため、溶出条件の選択できる幅が非常に広くなるため、その後の抗体の結合、溶出に適した方法である。

装置・器具・試薬

  • CNBr-activated sepharose 4B  (GE healthcare) ; 1 mM Hcl 4°Cで保存しておく。; 1 M Tris-HCl (pH 8.0) ; 0.1 M NaoAc;0.5M NaCl (pH 4.5); 0.2 M Glycine-HCl (pH 2.5); PBS

詳細  *それぞれの写真をクリックすると拡大します。

    • CNBr -activated sepharose 4B 0.3 g を15 ml チューブに移す。これに 1 mM HClを10 ml 入れ、ガラスフィルター、もしくはディスポーザブルのカップフィルターに移す(fig. 1)。
    • バキュームを引きながら、100 mlの1 mM HClでフィルター上のビーズを洗浄する 。洗浄の後、すばやくビーズを回収して精製タンパク質 1 mg (~10 ml、タンパク質は一部とっておく)と混合し、室温、2時間あるいは4°Cで一晩ローテーターで混和しながら反応させる (fig.2, 3)。
    • 未反応溶液を回収する。ビーズに対して 10 ml の1M Tris-HCl (pH 8.0)を加えて室温で2時間混和しながら反応させる。この間に手順2と未反応溶液の一部をSDS-PAGE, CBB染色にて、タンパク質のCNBrビーズへのカップリング効率を確認する。
    • ビーズを20 ml の 0.1 M NaoAc, 0.5M NaCl (pH 4.5) で洗浄した後、 20 ml の PBSで洗浄する。
    • 抗血清5-10 mlをビーズと混合し、室温、2時間あるいは4°Cで一晩反応させる。
    • 1mlの 0.2 M Glycin-HCl (pH 2.5)でビーズから結合した抗体を溶出。これを10回繰り返し10 フラクション回収。それぞれおフラクションを 2MのTrisを加えてすばやく中和する。(加えるTrisの量はpH試験紙であらかじめ中性付近になるように測っておく。)
    • 各フラクションについて、OD280を測定し、ピークフラクションを1つにまとめ、それをPBS等の適当なバッファーで透析する。
    • タンパク定量した後、分注して液体窒素で凍結。-80°Cで保存。

工夫とコツ

  • 抗体は透析後、凝集することがある。この場合は筆者は溶出したのち、Trisで中和したものを直接凍結保存している。ただしこの場合は濃度の決定をタンパク質定量試薬を用いてできないので(グリシンを多量に含むため)、精製抗体の一部ととBSAスタンダードをSDS-PAGE CBB染色によって、濃度を判定している。

参考文献