一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

抗体を用いた小胞のアフィニティ精製

author大林 典彦、福田 光則
所属東北大学大学院生命科学研究科膜輸送機構解析分野
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Home Pagewww.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/fukuda_lab/
Keyword膜、小胞、膜タンパク質、精製
Published2014-05-20Last Update2014-05-20
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概要・原理

膜や小胞を高純度に単離することは、細胞内における膜輸送機構を理解するためのアプローチの1つとして考えられる。ここでは、膜や小胞の細胞質側に存在するタンパク質、あるいは膜貫通タンパク質の細胞質側配列に対する抗体を用いた免疫化学的精製法について、特に我々が行っている色素細胞(melan-a細胞)からのメラノソーム精製法について概説する。

装置・器具・試薬

  • ・Anti-rabbit-IgG - Dynabeads M-280 (Invitrogen 11203D or 11204D)
    ・Rabbit control IgG (Santa Cruz sc-2027)
    ・BSA (SIGMA A7030)
    ・マグネットスタンド(:Dynal MPC magnetic particle concentrator)
    ・冷PBS
    ・21-gaugeテルモ注射針
    ・1mL テルモシリンジ
    ・Homogenize buffer
      :5mM HEPES-KOH (pH7.2), 10mM MgCl2, 5mM EGTA, 1% sucrose
      :用時、Roche Complete(EDTA free)を添加する。
    ・Lysis buffer
      :5mM HEPES-KOH (pH7.2), 150mM NaCl, 1mM MgCl2, 1% TritonX-100
      :用時、Roche Complete(EDTA free)を添加する。

詳細  *それぞれの写真をクリックすると拡大します。

    • [Dynabeadsの調整]

      <sample>
      ・Rabbit anti-tyrosinase antibody  3μg
      ・Anti-rabbit-IgG - Dynabeads M-280  30μL
      ・1mg/mL BSA/PBS(以下、BSA/PBS)  500μL

      <negative control>
      ・Rabbit control IgG  3μg
      ・Anti-rabbit-IgG - Dynabeads M-280  30μL
      ・BSA/PBS  500μL

      (以下の作業は4°Cにおいて行う。)
      (1)以上をエッペンにいれ、ローテーション(6rpm)。3h - O/N。
      (2)マグネットスタンドにエッペンを立て、2min放置。
      (3)上澄みをピペットマンで吸い取った後、マグネットスタンドからエッペンチューブを取り出す。
      (4)エッペンにBSA/PBSを1mL添加し、軽く転倒混和する。
      (5)マグネットスタンドにエッペンを立て、2min放置。
      (6)この洗浄作業を計2回行う。
      (7)30μLのBSA/PBSを入れ、4°Cに保管。
    • [オルガネラ分散液の調整]

      (1)コンフルエントのmelan-a細胞100-mm dish×1枚を用意する(*)。

      (以下の作業は4°Cにおいて行う。)
      (2)冷PBSにより洗浄。10mL×1。
      (3)冷PBS 500μLを添加する。
      (4)スクレーパーを用いて細胞をエッペンに回収する。
      (5)1000×g、5min。
      (6)上澄みを除き、ペレットにする。
      (7)Homogenize bufferを600μL添加する。
      (8)21-gauge注射針を8-10回通すことによりホモジナイズする。
      (9)800×g、10min遠心。
      (10)上澄みを新しい15mLチューブなどに回収し、以下を添加する。
        Fetal bovine serum  200μL -> 10%
        Homogenize buffer  up to 2mL
    • [オルガネラ免疫沈降]

      (1)<sample>と<negative control>用のDynabeadsの入ったエッペンに、オルガネラ分散液を0.9mLずつ添加する。残ったオルガネラ抽出液はインプット用サンプルとする。
      (2)4°Cにおいてローテーション。1-2h。
      (3)マグネットスタンドにエッペンを立て、2min放置。
      (4)上澄みをピペットマンで吸い取った後、マグネットスタンドからエッペンチューブを取り出す。
      (5)冷cold PBS 1mLを添加し、軽く転倒混和する。
      (6)この洗浄作業を計2回行う。
    • [ビーズにトラップされた膜からの蛋白質抽出]

      (1)洗浄後のDynabeadsに対し、それぞれLysis buffer 30μLを添加し、タッピングによりDynabeadsをよく混ぜる。
      (2)氷上静置15min。(時々タッピングにより混和する。)
      (3)マグネットスタンドにエッペンを立て、2min放置。
      (4)上澄みを回収し、SDS化後、PAGEにより解析する。

工夫とコツ

  • (*)細胞数については、実験系によって異なる。「Control IgG」と「対象となる抗体」による免疫沈降で特異な差が認められない場合は、出発点の細胞数を減らす必要がある。

参考文献

  • Ohbayashi, N., Maruta, Y., Ishida, M. and Fukuda, M. (2012) Melanoregulin regulates retrograde melanosome transport through interaction with the RILP-p150Glued complex in melanocytes. J. Cell Sci. 125, 1508-1518