一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

細胞骨格関連分子(微小管プラス端集積因子)の免疫染色

author清末 優子
所属 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(CDB) 光学イメージング解析ユニット
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Home Pagewww.cdb.riken.jp/oia
KeywordImmunostaining, cytoskeleton, microtubule,
microtubule-plus-end-tracking proteins (+TIPs)
Published2011-09-29Last Update2011-09-29
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概要・原理

本プロトコルでは、細胞骨格の抗体免疫染色を行う中で、特に固定法に注意を要する分子について記載する。細胞骨格は、構成分子の繊維構造への重合による形成と崩壊を繰り返すことで多様なパターンを形成する。微小管細胞骨格は主にそのプラス端側で重合と脱重合を繰り返しており、伸長する先端に特異的に集積する多数の分子群、”微小管プラス端集積因子(+TIPs)”、が存在する。+TIPsの局在は微小管の重合停止と共に消失するため、細胞の固定に際しては+TIPsの局在が消失する前に微小管構造が固定され保持されなければならない。そのためにはアルデヒド系の固定液は不向きで、-20℃アルコール固定(メタノール又はアセトン:メタノール=1:1)が良い。この方法により、生きた細胞中で観察される+TIPsの局在と同様のパターンが維持される。

装置・器具・試薬

  • 【バッファー】; -20℃ Methanole or acetone:methanol=1:1; 1X PBS; 10% Triton-X 100; その他、標準的な免疫染色プロトコルに準じる;

詳細  *それぞれの写真をクリックすると拡大します。

    • 固定(メタノール又はアセトン:メタノール=1:1)は事前に準備し、-20℃に冷却しておく。染色器を沈めた容器に十分な固定液を満たして冷凍庫内で冷却しておくと良い(Fig.1)。
    • 細胞を播種したカバーガラスを、-20℃固定液に浸漬し、2分間インキュベートする。
    • カバーガラスを取り出し、0.01% Triton X-100を含むPBSで洗う。
    • 以降、一般的な手順の通りに、血清やBSA、市販のブロッキング溶液等でブロッキング後、1次抗体、2次抗体でインキュベートし、褪色防止剤を含む封入剤でマウントする。

工夫とコツ

  • 細胞は、低温になるなど外界からの刺激を受けても微小管伸長が速やかに停止することがあるため、固定時は、37℃の培地あるいは実験条件下から直接、-20℃の固定液に浸漬すると良い。固定前にPBS(+)で洗浄する場合にも、温度等の環境はできるだけ実験条件に合わせ、短時間でリンスするにみに留める。 ; アルコール固定したサンプルでは、ファロイジンによるアクチン染色やDAPI等による核染色が弱くなるため、多重染色を行う場合には注意を要する。また、膜構造も破壊されやすいため要注意。

参考文献