一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

2016-10-25 大隅良典博士、ノーベル賞受賞おめでとうございます

藤木幸夫 (九州大学生体防御医学研究所)

10月3日、2016年のノーベル医学・生理学賞は東京工業大学の大隅良典栄誉教授に「オートファジーのメカニズムの解明」により単独授与されると発表された。この受賞に、世界中のオートファジー研究者のみならず基礎生物学・基礎医学研究者が歓喜している。正直、大隅さんとほか6人で集まり“呑み人会”「七人の侍」は歓喜では収まらず、この快挙を“神ってる”と表現したい。3年連続の日本人のノーベル賞受賞であると共に、日本での生理学・医学賞では1987年の利根川進博士に、また分子細胞生物学分野では1999年のRockefeller大学Gunter Blobel博士(米国ニューヨーク市)につづく単独受賞である。

オートファジーは、細胞が飢餓状態におかれたときに細胞内の小器官やタンパク質などを分解し再利用をはかる現象で、1950年後半から1960年代にかけてC. de Duve博士(Rockefeller大学元教授)らのリソゾームの発見後、彼により動物細胞の電子顕微鏡観において見出され”autophagy(自食採用、オートファジー)”と命名された。しかし、長い間この現象の分子レベルでのメカニズムはまったく不明であった。大隅博士は1988年、飢餓状態に置かれた酵母細胞の液胞(動物細胞のリソゾームと同じ)の中に、激しく動き回る構造体が生み出されることを光学顕微鏡観察により見出した。それを契機に、オートファジーに関わる遺伝子の探索を酵母変異株に対する相補遺伝子クローニング法(Forward genetics、順行遺伝学)により開始、その後水島 昇博士(現東京大学医学研究科教授)や吉森 保博士(現大阪大学生命機能研究科教授)の参画により大きく進展させた。約20弱のオートファジー(ATG)遺伝子の単離に成功、それらの細胞生化学的役割も世界をリードしつつ明らかにして来た。その努力と独創的研究成果は世界最高のものとして高く評価され、このノーベル賞受賞に到ったのである。オートファジーの概要が解明され、詳細は今後の課題として激しい競争下進行中である。

大隅さんは、出身地福岡市にある県立福岡高等学校のクラブ活動-化学部部長として、研究者の心そのものをさきがけ的「大隅4か条」として掲げている:「自分の目で確かめよう」、「はやりを追うのはやめよう」、「小さな発見を大切にしよう」、「様々な面からじっくり考えよう」である。これらを基本姿勢として、ずっとオートファジーを見つめ研究して来たように思える。大隅さんは、興味-orientedの研究が基本であり、それがどのように役立つかということよりは、重要な生命現象そのものが研究に値するという、すなわち学術研究が最も基本であり極めて大事であることを改めて確信させてくれたと思う。この受賞をきっかけに、基礎研究の重要性がより一層認識されることを期待したい。
 研究の世界は、チャンスが平等であり、夢がある! 未知の領域を探索する、例えば不思議な生命現象は限りなく存在し、その不思議さに「なぜ」と問いかける。「なぜ」を解明したときの達成感や充実感は何物にも代え難い、などを共有できる大学院生や若い研究者がより多く参入してくれれば、いわゆる世界を相手に高い見識と国際性および多様性を有する人材の育成に直接繋がるものと確信する。

2016年10月26日 「七人の侍」の一人 (九州大学生体防御医学研究所 藤木幸夫)


(2016-10-25)

日本細胞生物学会賛助会員