CSF編集委員長
松田道行
科学雑誌のあり方が大きく変わりつつあります。まず、「発見の一番乗り争い」の役割がプレプリントサーバーにとって代わられつつあります。一刻を争って成果を発表するという目的では、科学雑誌は使われなくなりました。
第二に、「専門誌の衰退」が挙げられます。いまや自分の研究に関連する論文はウェブ検索で探す時代になり、学術誌の目次に毎週、目を通す研究者は少なくなりました。Cell Structure and Function誌は、細胞生物学を網羅する60名近い編集委員が必ず目を通すという意味において、視認性に極めて優れた雑誌です。
最後に「オープンアクセス化」です。研究成果は広く無償で公開すべきという世界の潮流により、商用雑誌はその収入源を著者からの投稿料に依存せざるをえなくなりつつあります。
そこで発生したビジネスモデルがインパクトファクター偏重の風潮に便乗した高額な論文投稿料を徴収することです。しかし、このモデルも長くは続かないでしょう。なぜなら、個々の論文の引用数が容易に解析できる時代になり、「どの雑誌に発表したか」ではなく、「どれだけ引用されたか」が論文を評価する指標として使われるようになるでしょうから。
そして、どれだけ引用されるかは、どのコミュニティーが信頼性を担保しているのかに依存します。 Cell Structure and Function誌は日本細胞生物学会員の献身的な協力のもと、今後も信頼性の高い、流行にとらわれない論文を発表していきます。
2024年3月