膜受容体
目加田 英輔大阪大学微生物病研究所細胞機能分野

細胞増殖因子やサイトカイン、またこれらに対する受容体、あるいは細胞接着因子や細胞外マトリックスなど様々な細胞間情報伝達を担う分子群のある種のものは、細胞外からの刺激に伴って酵素的な切断を受け、細胞外に放出されることが古くから知られている。このプロセスはエクトドメイン・シェディングと呼ばれ、膜蛋白質を細胞膜にアンカーされた状態から細胞外に遊離させることで、分子の存在状態を劇的に変化させる。EGFファミリーの増殖因子をはじめとするある種の増殖因子やサイトカインは、はじめ膜結合型の前駆体蛋白として合成された後、シェディングによって細胞外に分泌される。エクトドメインシェディングは、特に膜結合型として合成される増殖因子やサイトカインにおいて情報の発信を制御する重要な機構のひとつである。種々のHB-EGF変異マウスの解析から、マウス生体内においてHB-EGFが正常にその機能を発揮するために、エクトドメインシェディングが非常に重要なステップであることが明らかになっている。
参考文献
蛋白質核酸酵素 54, 1722-1727, 2009