膜受容体
目加田 英輔大阪大学微生物病研究所細胞機能分野

リゾフォスファチジン酸やエンドセリン、アンジオテンシンIIなどによるG蛋白共役型受容体(GPCR)の活性化に伴って、EGFRが活性化される現象をEGFRトランスアクチベーションと呼ぶ。この過程でHB-EGFのシェディングが中心的な役割を果たしていることが近年明らかになってきている。GPCRリガンドによるGPCRの活性化がRas-ERK経路を活性化し、このことがHB-EGFのシェディングを誘導し、分泌されたHB-EGFがEGFRを活性化し、さらにその下流でRas-ERK経路が活性化する。このことがさらなるHB-EGFのシェディングのみならずHB-EGF自身の発現をも誘導し、ここに細胞増殖あるいは移動促進などシグナルのポジティブ・フィードバックループが形成される。このようなEGFRトランスアクチベーション機構とこれによるポジティブループの形成が、心肥大や動脈硬化、高血圧、そして発癌など様々な病理にも深く関わっていることが近年わかってきている。
参考文献
蛋白質核酸酵素 54, 1722-1727, 2009