膜受容体
目加田 英輔大阪大学微生物病研究所細胞機能分野

ジフテリア毒素(DT)は毒素活性を担うAフラグメントと受容体結合を担うBフラグメントからなる毒素分子である。DTは細胞表面のジフテリア毒素受容体(DTR)への結合を介してエンドサイトーシスされ、エンドソームの酸性化に伴うDTの構造変化によってAフラグメントがエンドソームの脂質二重膜を通過して細胞質に放出される。フラグメントAはペプチド伸長因子EF-2をADPリボシル化することで蛋白合成を阻害し、細胞を死に至らしめる。DTRの本体はEGFファミリーの増殖因子HB-EGFの膜型前駆体(proHB-EGF)である。ヒトやサルなどの細胞はDT感受性なのに対し、マウスやラットの細胞はDT抵抗性である。これはDTRのDT結合部位(proHB-EGFのEGF様領域)のアミノ酸の違いによるDT結合性の相違による。DTのDTR (proHB-EGF)への結合特異性は非常に高く、DTは他のEGFファミリーやマウス型HB-EGFには全く結合しない。DTRはテトラスパニンCD9と細胞膜上で複合体を形成することでその細胞表面量が増加するが、その機構は未だ明らかではない。
参考文献
蛋白質核酸酵素 46, 506-511, 2001