オルガネラ・細胞内輸送関連
中野 明彦東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻
AからBへという2つの細胞小器官の間でのタンパク質の輸送過程で,Bに進む積み荷タンパク質とAに留まるレジデントタンパク質の選別の概念。レジデントタンパク質が,Aから運び出されることなく留まるメカニズムが静的残留(static retention),Bに一旦輸送されてからAに送り戻されるのが動的逆送(dynamic retrieval)である。歴史的には,BiPなど小胞体に局在するタンパク質のシグナルとしてKDEL配列が同定され,当初小胞体残留シグナルと呼ばれたが,のちにゴルジ体から逆送されるためのシグナルであることが証明されて,より一般的な小胞体局在化シグナルという呼び方に落ち着いた。なお,retrievalは「回収,検索」といった意味の言葉であり,回収シグナルという表現も使われる。これを逆送と訳したのは,retrograde transport(逆行輸送)を意識した意訳である。