河野 憲二奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科
大隅先生、ノーベル生理学・医学賞受賞おめでとうございます。もらわれるのは時間の問題と思っていましたが、非常にタイムリーに受賞されうれしく思っております。またこの競争の激しい時代に、単独受賞というのもその分野の基を切り開いたという意味で本当に素晴らしいですね。
大隅さんとの出会いは、科研費の班会議や細胞生物学会関連でおそらく20年以上も前になると思います。私の中で一番印象に残っていることは、細胞生物学会のポスター発表をご自身でやっておられ(今からですと考えられないことですが)、オートファジーの酵母の変異株の話を直接伺った時のことです。そのポスターには、酵母の美しい電顕写真が示されており、ひときわ目を引くものでした。大隅さん自身が「きれいな写真でしょう」と自慢をしていましたが、私もその写真の美しさにびっくりしたのを覚えています。当時の大隅さんは、トレードマークの髭をしておられましたが、まだ黒々としており、またいつもパイプを吹かしており、一見芸術家肌のように見えました。基生研に移られたあとは、サイエンスの話というよりは、同じ大学院大学ということで、「文部省は大学院大学をせっかく作ったのに、何故育てようとしないのか」、「日本のサイエンスはこのまま放っておいたら駄目になる」などという話を(酒を飲みながら)よくしました。普通このような話はしないのですが、何故か大隅さんと話をしていると、そのような話をする機会が多かったように思います。その意味でも今回の受賞の時に、日本の基礎研究の重要性のことを話されたのは良かった。やはりノーベル賞受賞者が言うと重みが違います。
大隅先生(依頼する時には先生になります)には、折につけいろいろなことをお頼みしてきましたが、いつも快く引き受けて頂き大変感謝しております。随分以前になりますがNAISTバイオ学術賞の選考委員長をお願いしたこともありました(NAISTバイオ学術賞は2003年に山中伸弥さんが受賞されており、今回の大隅先生の受賞でその選考委員長にもノーベルローリエイトが加わったことになり、この賞もさらにノーベル賞と関係の深い賞になりました)。最近では、奈良で開催した細胞生物学会でのPlenary Lecture、七人の侍によるシンポジウムなどもやって頂き、本当に感謝しております。今後は、なかなか忙しくてお会いする機会が取りにくくなるかとも思いますが、次にお会いする機会には是非祝杯をあげさせて下さい。また奈良に来られる時には、先生が気に入られた焼肉店にご招待しますので、是非一献傾けましょう。