一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

Vol.23 April, May & June (2) 会長就任に際して

目加田 英輔 (大阪大学微生物病研究所)

 米田悦啓先生の後を受けて、本年4月より日本細胞生物学会会長に就任致しました。就任してからすでに2ヶ月が経過しておりますが、学会長という立場の責任の重さをひしひしと感じております。現在私は国内の4つの学会に所属しておりますが、毎年参加することを決めているのは細胞生物学会だけで、私にとって本学会は最も重要な学会です。これからの2年間、幹事や運営委員の先生方に助けていただきながら、本学会の運営に最善を尽くしたいと考えております。

 さて、本会は、現在、いくつかの懸案事項をかかえております。その一つは会員数が少しずつですが減少傾向にあることです。学会のアクティビティーを維持し、若手研究者が自由に参加できる学会運営を目指すには、新規会員の入会を積極的に募ることが重要です。少しでも多くの若手研究者が本学会に入会していただけるよう、魅力ある学会作りを目指すと同時に、そのための何らかの具体的な取り組みが必要であろうと考えています。会員数の減少と同時に、解決しないといけないのが、毎年の収支状況の改善です。本会はCSFの編集・発行あるいは大会開催のための補助費等で毎年少しずつ赤字が出ており、それをこれまで貯めてきた特別会計から補填することで収支を合わせております。早急にこの状況を改善しないと、十数年後には本会は立ち行かなくなる恐れがあります。これに関しても、何らかの変革が必要と考えています。

 魅力ある学会作りという点では、毎年の大会をどのように運営するのかが非常に重要になります。今年度は高橋淑子大会長のもと発生生物学会との合同大会となりましたが、すばらしい大会になったと感じております。今年の合同大会に参加された皆様も同じように感じられたと思いますが、どの会場も大変熱のこもった講演とディスカッションがなされておりました。これは、高橋先生を中心とした大会事務局の方々の企画力と努力に負うところが多いのは言うまでもありませんが、一方で合同大会にしたことによるスケールメリットの効果もあると思います。今後の大会運営に一つの方向性が示されたのではないかと考えています。大会2日目に開催しました評議員会・総会において、現在5年に一回のペースで行っている発生生物学会との合同大会をもう少し頻回に行ってはどうかという提案を私から致しましたが、大多数の方から3年に一度にするのがよいというご意見をいただきました。今後、発生生物学会とも相談をして、次回の合同大会の時期を決めたいと考えています。

 さて、本会にとって大変嬉しいことは、本会が刊行する学術誌Cell Structure and Function(CSF)に質の高い論文が会員から多数投稿されるようになってきていることです。これまで歴代の編集委員長がCSFのレベルをあげることに取り組まれ、CSFは国内でもかなり早くからオンラインジャーナル化、オープンアクセスを実施してきましたが、ここに至って会員からの投稿数もずいぶん増えて来ています。2010年のImpact Factorは3.26ですが、今後さらに上昇するものと思われます。CSFでは貝淵編集委員長のもと、速やかな査読を心がけていますので、会員の皆様には今後是非ともCSFへの投稿を考えていただきたいと思います。CSFが強くなることと細胞生物学会の発展は大きく連動しています。わが国から発行される代表的な学術誌として、是非ともCSFをさらに良いものにしていきたいと考えています。

 最後に法人化の問題について触れたいと思います。現在細胞生物学会は法人格を持たない任意団体として存在しています。任意団体というのは社会的に正式に認知されていない団体ですので、様々な事業を実施する上で困難があると同時に、事業体として社会的責任を果たす上でも障害となります。このようなことから、近年多くの学会が法人化を進めています。細胞生物学会でも2011年の総会・評議員会で法人化実施の検討を開始することが決定され、また今年の総会・評議員会で法人化検討委員会が設置され6人の委員が決定されました。今後はこの委員会で、法人化の必要性、法人化をした場合に発生する不都合な問題点、公益法人としての認定を受けるための要件等を精査した上で、それらの結果をこの会報等を通じて皆様方にお知らせをするとともに、2013年の総会・評議員会で法人化をするかどうかのご審議をいただきたいと考えています。是非今後発行される「細胞生物」に注意していただき、法人化について考えていただきたいと思います。

 長くなりましたが、細胞生物学会は一つの節目に来ていると思います。今後少しずつ会員が減少して何十年後に自然解散となるのか、大きく発展してわが国の生命科学をリードする主要学会となるのか、その未来に私ども執行部は大きな責任の一端を担っていますが、会員の皆様も細胞生物学会発展のために積極的なご協力(新規会員の勧誘、大会への参加・発表、CSFへの投稿等)を是非ともお願いしたいと存じます。


(2012-06-28)

日本細胞生物学会賛助会員

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