米村 重信徳島大学大学院 医歯薬学研究部/理化学研究所 BDR
本年6月に大野博司前会長の後を受け、日本細胞生物学会会長に就任いたしました。今年は京都大学森和俊大会長の下でWeb開催の形となった大会でしたが、その本来の開催期間にZoom会議によって理事会を開くなど、全く新しいやり方での会長就任となりました。平常時でも大変な責任のある役職ですが、新型コロナウイルス感染拡大の状況下という未曾有の事態となり、ますます舵取りの責任は重大と言えます。とはいうものの、このような機会には単に今までと同じことを抜かりなく行うのではなく、全く新しい試みなども積極的に導入していくことが必要になってくると思います。会員全員が学会の意味や、期待するものを改めて考えて、アイデアを提案できるチャンスと捉えることもできると思います。
私自身は大学院ではまず動物学会、発生生物学会に所属し、その後細胞生物学会に入会しました。アメリカでのポスドクを終えて帰国してからは、スタッフとして所属した研究室のボスが月田承一郎先生だったこともあり、細胞生物学会が毎年必ず参加するメインの学会となりました。最も愛着のある学会であることは間違いありません。現在の大会で毎年行われている、若手最優秀発表賞の導入の際におそらく深く関わり始め、特に、この4年間は吉森保前々会長、大野博司前会長の下で副会長を務めたということがあり、様子を知っている人間ということで役が回ってきたと理解しています。
細胞生物学会の抱える問題の流れとしては、CSFをどのように良いジャーナルに育てるかということ、法人化、会員の減少傾向や、より大きな学会の間で埋没することをどうするかなどのことがありました。CSFに関してはオンラインジャーナル化の後、歴代編集長の尽力で着実に質が上がってきていると思えます。法人化も目加田会長のもと、実現されました。後者の問題については、細胞生物学会は自分たちの規模を意味深い学術交流のためには適正と考え、密接なコミュニケーションをはかることができ、若手にとって得るものが多い学会、大会運営を行うということで、将来的にも学術レベルを高く維持し、若者を集め育てて科学に貢献していく、というような方針が受け継がれてきています。細胞生物若手の会の活動にも期待するところが大きいです。
私もそのような方針をさらに推し進めたいところですが、その時期に、3密を避けるのが基本という生活様式になりました。密通、密会、密売ではありません。学術大会にとっては、密接なコミュニケーションをはかれる機会が少なからず奪われる事態となりました。このような状況では、直ちに元通りに復帰することを待つだけでなく、この際にできる新しいことにチャレンジしていくのもよろしいかと思います。新しいことをやる必要があるかという議論のハードルは平常時に比べると今は下がっており、学会における学術的コミュニケーションの方法も新しいものを試み、取捨選択できる機会だろうと考えております。冒頭にも述べましたが、会員全員が学会や大会を見直し、直接的なコミュニケーションが欠かせないところや、オンラインの利点などを考え、どんどんアイデアを出していくことが望まれます。
そのような中で私は自分の考えで引っ張るというよりは、様々な人の考えをなるべく活かして支えるつもりで執行部を考えました。副会長には新しいことに積極的な兵庫県立大の吉田秀郎先生(現CSF編集長なのでそちらの仕事に影響しない程度で助言をいただく)にお願いいたしました。庶務幹事には将来計画にも関わって来られた京都大学濵﨑洋子先生になっていただきました。また、もう一人の庶務幹事には東京大学大杉美穂先生にお願いし、生物化学学会連合など、首都圏で行われる学会関連の会合への参加を中心にご協力いただきます。会計幹事は九州大学の池ノ内先生にお願いし、新風を吹かせていただきたいと思います。執行部はこのような体制で2年間走っていく予定です。監事(法人である細胞生物学会の事業全般の監査)には、理研の今本尚子先生、兵庫県立大学の吉久徹先生にお願いいたしました。
変化が加速していく現状ですが、こういう時こそ、会員一人一人からのアイデア、意見、力添えが欠かせません。魅力的な価値ある細胞生物学会へと常に変革していくため、皆様の支援をよろしくお願いいたします。