中野 明彦東京大学・大学院理学系研究科/理化学研究所・基幹研究所
3月一杯で2年3ヶ月務めさせていただいた日本細胞生物学会の会長の職を退き,4月より新会長,京都大学の西田栄介さんに交替いたしました。大きな肩の荷を下ろしたこの機会に,会員の皆さまに改めてお礼を申し上げたいと思います。
2年前,会長着任のご挨拶でも書きましたように,私は廣川信隆さんが会長の時代に庶務幹事を仰せつかって以来,長らく本学会の執行部で働いてまいりました。数えてみると10年間,思えば本当に長い月日でありました。また,この間に日本細胞生物学会がどのように変わってきたかを思うとなかなか感慨深いものがあります。前会長の永田和宏さんの時代がある意味の頂点ではありましたが,私の任期の2年間にも,いくつかの改革の仕上げを行いました。将来検討委員会の答申を受け,学会のプログラム委員会を再度新たに立ち上げて大会のあり方の見直しを行い,大阪大会以来の路線を基本的に継承しながらも,よりボトムアップの提案を行いやすい形態に変更しました。これもまた,横浜,名古屋,大阪という今後3回の大会での評価を受け,さらによりよいものへと進化していくことと思います。一昨年度のIUBMBとの共催は,わが国の関連分野の学会を再編していく可能性について,いろいろと多くのことを考えさせてくれました。続いて昨年度行った日本発生生物学会との第2回目の合同大会は,双方の会員にとって大変好評で,これからの協力体制がさらに加速するきっかけになれば幸いです。また,実態にそぐわなくなりかかっていた会則をさまざまな細かな点で改定し,会計年度を4月?3月に変えて科研費等の執行を容易にすると同時に,会長の再任禁止規定を定めました。これによって執行部の回転が早まり,より機動的な学会運営が可能になるとよいだろうと考えています。
奇しくも新会長の西田さんは,私が執行部に入ったときに庶務幹事の先輩としてすでに本学会の中枢で活躍していた人です。途中から日本分子生物学会の執行部に引っこ抜かれ,本学会の執行部からはやや遠ざかってしまっていましたが,本学会をリフレッシュして新風を吹き込むには絶好のタイミングで戻ってきてくれました。その手腕に大いに期待したいと思います。
私自身はと言えば,自分の所属学会としてはもう日本細胞生物学会しか思い浮かばないほどどっぷりと浸かっていたのに,肩の荷が下りてほっとする間もないうちに,今後はまた別の学会で働かされることになってしまいました。今さら違う顔ができるものだろうかと大いに心配ですが,今度は個々の学会というレベルをさらに越え,日本の生命科学,細胞生物学のために何ができるかということを考えて,もう少し頑張ってみようかなと思っています。 自分自身で関わったことと言えば,会長時代よりもその前の編集委員長時代に行ったCell Structure and Function誌の改革が最も忘れられないものとなりました。いち早く完全電子化を進め,徹底した審査によってよい論文を掲載することによってインパクトファクターも驚くほど向上させることができました。その改革はまだ途上にありますが,現委員長の米田悦啓さんが誠心誠意頑張ってくれていますので,きっともっともっとよいジャーナルに脱皮していってくれることと信じています。
会長としての2年間は本当にあっという間のことでしたが,無事に任期を全うできたのは,執行部のこれまでの改革路線を支持し,応援してくださった会員の皆さまのおかげであると心から感謝しています。また,庶務幹事の水島昇さん,今本尚子さん,会計幹事の平岡泰さん,編集委員長の米田さん,そして会則改定後の短い期間ではありましたが副会長の西田さん,皆さん大変お忙しい中,至らない私を支えてくださってありがとうございました。学会事務局の加藤晴巳さんには,本当に長いことお世話になりました。最後に,編集委員長時代,会長時代を通じて,膨大な仕事の山につぶされそうになる私をいつも優しく助けてくれた,秘書の山本浩代さん,深谷香織さん,鈴木美和子さんに心からお礼を述べたいと思います。