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忘れえぬ言葉

2004.10.01
Vol.15 October

貝淵 弘三名古屋大学大学院医学系研究科

 明治の文豪,国木田独歩の「忘れえぬ人々」という作品を覚えておられる方もおられるでしょう。今回の話はそれをもじって忘れえぬ言葉ということにしたいと思います。大学院生時代の師匠(西塚泰美先生,神戸大学教授,当時)の言葉,それらは忘れえぬものが多いのですが,その珠玉の言葉はいずれどこかで触れることにして,今回は著明な研究者からいただいた言葉を紹介して,若い読者に何か伝えられたらと思います

 私がまだ大学院生でC-キナーゼの研究をしていた頃です。1980年代の初頭,C-キナーゼが試験管内でジアシルグリセロールによって活性化されることがすでに明らかになっており,我々の研究室では血小板をモデル細胞として,C-キナーゼがトロンビンのような生理活性物質によって実際にin vivoで活性化されることを検証しようと懸命になっていました。生化学会で,私が血小板を用いた研究成果を発表した直後,Calmodulinの発見者の垣内史郎先生(大阪大学教授,当時)が声をかけてくださいました。トロンビンで血小板を刺激すると,形態が大きく変化するが,その形態変化にはアクチン線維や微小管の大きな再構築が必要であることを伝えました。細胞骨格の再構築のメカニズムは不明で,細胞内カルシウムが重要な役割を果たすであろうが,その詳細はわからず今後の大きなテーマになると思うとお話しました。すると,垣内先生はすかさず,「君は面白いことを言うね。細胞骨格の再構築の制御機構か。いつか,その謎が解ければいいね」とおっしゃいました。高名な研究者に少し褒めてもらい素直にいい気分でした。その言葉は彼が亡くなられた後も,私の心のどこかに留まり,10数年後自分が細胞骨格の制御機構の解明をテーマとして選ぶときの大きな後押しになりました。そのときは気づきませんでしたが,今になれば20年以上前のちょっとした褒め言葉が私にいい意味での自信を与えてくれたのだと思います。おそらく,言われたご本人は,自分が若い研究者に言われた言葉を間もなく忘れてしまわれたことでしょう

 話を再び80年代に戻します。その後,私は細胞骨格ではなく,C一キナーゼによる転写制御に研究テーマを移しました。癌遺伝子研究の全盛時代で,細胞膜受容体からどのようなメカニズムで核内の遺伝子発現調節が行われるかに,多くの人が興味を持っていた時代でした。やがて,ras癌遺伝子に注目し,Rasが,細胞増殖因子受容体の下流で,いかにして転写を調節するかに私の興味は移っていきました

 いくつかのグループの激しい競争の結果,RasがRafを活性化して,MAPキナーゼカスケードを活性化することが判明しました。我々のグループも同様の結論を得て論文を出しましたが,少し発表が遅れてしまい,敗北感に襲われました。その頃ある学会で上代淑人先生(東京工業大学教授,当時)にお会いしました。上代先生は蛋白質合成で有名な方ですが,細胞増殖因子の下流でRasが活性化されることを世界に先駆けて示された研究者でもあります。「(Rasの下流が明らかになり,遺伝子発現の調節機構も解明されつつあり、)この分野もless excitingになってきましたね」とあっさり喝破されました。私も同感で,その指摘に共感しました。日本国内では著名な研究者達が,これからは細胞膜から核へのシグナルの解明が重要になると声高に言われていた頃です。いわゆる癌遺伝子産物の機能がある程度見えてきました。一つのモデルが出てしまえば,後は似たようなものです。自分が長年追いかけてきたテーマに終止符を打つ時が来たと感じました。このとき学んだことは,自分の感覚を大事にしようということでした。仮に世間で何が流行しているのであれ,自分が面白いと思うことをやればよいと思います。それが,その数年後に始めた細胞骨格の再構築の制御機構だったわけです

 年々歳々当時の垣内先生や上代先生の年齢に近くなってきました。日々の雑用や会議に追われ,大学院生の時以上に慌ただしく過ごしています。学生諸君と十分なdiscussionする時間的余裕のない自分にもどかしさを感じます。そんな深夜,一人で机に向かったとき,時として突然私を襲う不安の正体は,若い研究者に果たして忘れえぬ言葉を発してきたのかということです

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