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山里から

1996.07.01
Vol.7 July

横田 貞記山梨医科大学解剖学教室

 山里に引っ越して3年になる。周りは森で,その中にログハウスが点在している。ここは言わば別荘地であるが,私は別荘地など持てる収入もないので,家は毎日寝泊まりする住居である。テレビは衛星放送しか入らないから,世間の喧騒から隔絶されている。職場までは車で片道45分かかるが,べらぼうに遠いわけではない。ここに来て子どものころの生活が数十年ぶりに戻ってきたような気がする。子どもの頃そうだったように,ここでは四季を通して森の香りを満喫し,木々の芽吹きから落葉までを楽しみ,さらに木々を飛び交う鳥たちや地を這う虫たちをつぶさに観察することができる。休日にそれらをぼ―っと眺めていると時間の経つのを忘れ,いつのまにか午前は終わっていることに気づいたりする。

 越してきた頃から,敷地の隅に小鳥の餌台を作ってヒマワリの種やその他の穀類を置いている。やってくる小鳥はヤマガラ、シジュウカラ、コガラ、コジュウカラなどである。これらの小鳥はヒマワリの種を両足で小枝に押さえて上手に殻を割り、実を食べる。秋のある日、餌の減りようが異常に速くなったので,少しまじめに観察してみた。ヤマガラが頻繁にヒマワリの種を運んでいる。それを追うと,どうやら地中に種を埋め込んでいるようであった。早速,小鳥がつついていた辺りを調べてみると,果たして種があった。種は尖った方を下にして埋められていた。面白いことには,実の落ちた松毬の中にまでヒマワリの種を差し込んだりする。ヤマガラはせっせと食糧を保存していたのである。National Geographicの記事によると,アメリカコガラも同じように食糧を隠して貯えるそうである。その隠し場所を記憶するために、この時期アメリカコガラの脳の海馬領域で細胞分裂が起こり,神経細胞が増えるという。きっと日本のヤマガラでも同じことが起こっているに違いない。はじめ神経細胞を増すほど記憶畳があるのだろうかと思ったが,冬には木の葉は落ちて,草は枯れるので,状況がまったく変わってしまう。それでも記憶しているということは,恐らくヤマガラは隠し場所のグローバルなオリエンテーションと局所的なそれとの両方をかなり正確に行っているのであろう。こう考えるとヤマガラにとっては,隠し場所の記憶は脳の神経細胞を増やすほどの大きなイベントなのかもしれない。ヤマガラは隠した種のかなりのものを掘り返して食べているようだ。これは記憶していることの証であろう。

 アメリカの南部にはドングリキツツキという鳥がいて,秋になるとこの鳥は木の幹に穴を開けて,そこにドングリを詰め込むそうだ。電柱にもこれをするので,無数のドングリが電柱に埋め込まれることになる。ヤマガラと違うところは,ドングリキツツキはこの貯えをほとんど忘れてしまうことである。したがって,このドングリキツツキの行動は食糧の貯蔵とは結びついていないようだ。きっと,この鳥の脳では神経細胞が増えないのだろう。ところで,食糧を貯蔵するという行動は高度に知能的だといえる。なぜなら,将来を考慮していると思われるからである。霊長類の中にもこんなことをしないのが多い。いやヒト科の中でさえ「宵越しの金はもたぬ」などと粋がるむきもある。ヤマガラはこの行動に関する限り優れて知能的だといえそうだ。

 名前は忘れたが,北アメリカに棲息するある小鳥のオスは春になるとメスを引き寄せるための歌をいくつも歌わなければならない。この鳥の脳でも春には神経細胞が増殖し,生殖期が終わると消滅するという。小鳥のような小さな脳では,増殖した細胞を生涯保存することは負担になるからこのような機構ができたのだろうということであるが,歌の記憶装置がそれほど膨大なものなのかどうか私にはわからない。成熟した個体では神経細胞は分裂しないと言われている。これは神経細胞がシナプスを介して連合することによって機能を果たしているのだから当り前だ。ヤマガラや歌を記憶するこの鳥の脳における神経細胞の増殖はコンピュータのハードディスクを増やすようなものなのかもしれない。恐らく,秋になるとヤマガラの脳の海馬に分裂を促す物質がはたらき,細胞が分裂して記憶装置を増設するのだろう。この増設を可能にしている機構は解明される価値がありそうだ。また,増設した装置は必要なくなるとアポトーシスによって取り外されるのだろう。自然には優れものがたくさんいる。

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