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糖鎖の機能は重音の響き?

1998.01.01
Vol.8 January

古川 清東京都老人総合研究所・生体情報部門

 最近テレビで以前から見たいと思っていた「シャコンヌ」という題名で,ヴァイオリニストのギドン・クレメルが音楽を監督した映画を見た。理知的で彫りの深いマスクをもつリシャール・べリが主人公アルマン・ベッケルに扮し,ソリストとして十分な技巧を身につけベートーベンのヴァイオリン協奏曲を弾き喝采を浴びるが,それが自分の音楽でないことに気がつく。自分の昔を追い求めて,リヨンのメトロの音響のよい地下道で風雪に耐えながら修業をする姿を描いたものである。ついに求めていた境地に辿りつき,映画の最後に弾くバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタの一楽章「シャコンヌ」の重音の響きは,悠久の中における我々の存在価値を問いかけるように伝わってきた。バッハの「シャコンヌ」は難度の高い曲であり,あの狭い指板の上で複数の弦を押さえて作り出す重音は,指の位置にとても神経を払い,その表現が難しい。この映画で表現された少し味の違うこの緩やかな一舞曲に,なぜかくも心を掻きむしられるのか,その答えを求めて果てしもない想いが巡る。

 同じ想いを,実は糖鎖にも寄せている。最近遺伝子ターゲティングにより,タンパク質に糖を付加する転移酵素を欠損したマウスが幾つか作られ,欠失する糖の種類により胎生期で致死となったり,あるいは生まれてきてもある期間内に淘汰されてしまうことが判明した。この結果はこれまで考えられてきたように,糖鎖は我々の生命を維持するうえで必須であることを示している。しかし,こうした糖鎖がどのように機能しているかについては,未だ明確でない。糖鎖が明らかに機能していることは,白血球表面の糖鎖に発現しているシアリル・ルイスⅩといわれるN-アセチルラクトサミンにシアル酸とフコースが結合した4糖が細胞接着分子セレクチンのリガンドとして見つかり,白血球が血管内皮細胞や血小板と特異的に接着する時に関与していることから分かる。ところでこうした機能糖鎖は,細胞で造られる全てのタンパク質で発現しているかというとそうではなく,ある特定のタンパク質にしか発現していない。そこでさらに特定のタンパク質について糖鎖を解析すると,何カ所かに存在する糖鎖のうち機能構造はある特定のペプチド領域に存在する糖鎖に見出される。今度はその特定部位に結合している糖鎖の構造を解析すると,その構造は均一ではなく,いわゆるミクロ不均一性が存在する。このため多くの研究者から,糖鎖は見離される。しかし興味深いことに,このヘテロな糖鎖の割合は常に一定に保たれている。糖鎖とタンパク質の結合は弱いと考えられているのに,なぜその機能に必要な糖鎖構造が100%提示されないのか。この疑問こそが,実は糖鎖の糖鎖たる機能を示しているのではなかろうか。すなわち機能構造をもつ糖鎖ともたない糖鎖が共に存在することがむしろ重要で,生体はこれらの情報を同時に読んでいるのではなかろうか。あたかも細胞が複数の弦を弓の角度を変えながら糖鎖という音符を重音で弾き,その場に適した響きを醸し出すように。したがって,我々が糖鎖の機能を単純明快な文章で綴ったり,単一な糖鎖を取り上げてその機能を解析しているのは,実は真実からかけ離れたところで生命現象を解析しているのかも知れない。リービッヒの最小律よろしく,こうした糖鎖の十分な機能解明なくして細胞の機能解析在らずと考えるのは,思い過ごしであろうか。

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