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30代女性研究者の一人として

1998.06.01
Vol.9 June

木村 洋子東京都臨床医学総合研究所

 労働経済学者の夫が、”Career patterns of women and men in the sciences”(Sonnert and Holton.1996.

 American Scientist 84:63-71)という論文を見せてくれた。これは,アメリカの女性研究者を対象に分析した研究で,制度上の男女平等が達成された現在でも,なぜ多くの女性研究者の地位が低いのか,なぜ多くの女性研究者が消滅していくのかを,以下のように分析している。

 女性研究者は,何か大きな特定の障害に会うのではなく,小さな障害をさまざまに積み重ねて経験するのである。その障害には,あえてわけてみると大きく2つある。第一に,サイエンスの社会といえども,他の男性社会同様,女性を中心に取り込まない有形無形の仕組みが,いまだに公私にわたって残っているという点である。この結果,例えば,論文の生産性が同等であっても,女性の方が男性よりも低い地位にとどまっている傾向がある。第二は,『女性であること』自体から生じる要因である。これには,男女の生まれつきの差や社会的に作られる差、そしてこれらの差から生じる行動パターンや考え方の違いなどがある。例えば,男性の方がcarrier successに対して貪欲であり,自分を売り込むpolitical gameに積極的に参加する。逆に女性は妙に潔癖であるとともに,生き馬の目を抜か.なくてはならないようなcompetitiveな分野を避け,自分自身のnicheを求める傾向がある。サイエンスのやり方においては,女性のほうが完璧性である傾向があり,その分論文数は少ないが引用される回数は多い。しかし,これには第一に述べたように,男性は将来性を高く評価されることがあるが,女性の場合,本当に価値のある仕事をするまで評価されないような,社会的状況が関与しているともいえる。

 以上の分析の中で,第一の点はアメリカ以上に日本でも重大だと思えるが,私がさらに興味深かったのは,第二の要因,中でも『女性が女性として作られること』の議論である。思うに,特に日本社会では,謙虚で素直なかわいい女性(妻、母)になることが期待される。その上期待される役割を果たしていないと,女性自身も居心地が悪く感じるように教育される。例えば,30を過ぎた独身女性に対する世間の風当たりは強い。また,『子育ては母親の責任』という根強い考え方が,働く母親への圧力になり,働く事に罪の意識を持つ女性さえいるらしい。また,謙虚で素直な性格が行き過ぎると,研究に自信が持てなくなる場合もある。すると,人から言われた事が妙に気になり,次のステップへの足伽になったりする。

 もちろん,以上のことは,ある『閾値』を越えて卓逸した人には問題にならないだろう。しかし,大多数の女性研究者は,一報一報の論文をやっとの思いで作り上げていく普通の研究者である。彼女達は様々な小さな障害を経験し,やがて『ガラスの天井(glass ceiling)』に出会うことになる。30代半ばは,私を含め多くの女性研究者にとって転機だと思う。生物学を志して10年以上過ぎる。30代前半まで,一日のほとんどをラボで過ごし,ひたすら研究のことを考える日々をおくる。しかし,こんな生活を続けているわけにはいかないことがわかる。家庭を持っこと,先延ばしにしてきた出産と子育て,いつか訪れるかもしれない老いた親の介護,そして経済的にも自立しなくてはならない。また,30代になると,体力的にも20代のようにはならず,身体の故障もちらほらでてくる。しかし,実績が不十分だから,奨励金やグラントを申請しても思うように通らない。『ガラスの天井』という言葉が,頭の片隅にちらつき始める。

 女性研究者が直面する障害は,様々な問題がからみ合っている以上,簡単に取り除くことができるとは思えない。それでも最近まで,女性研究者の地位を向上させるためには,何よりも数を増やし,層を厚くすることが大切だと思っていた。だから,私自身は,質の高い研究を目指し続けることだけが大事だと考えていた。だが今はちょっと違う。それだけでなく,自分の研究を理解してもらうために槙極的かつ柔軟になること,女性的でありつつも必要に応じてしたたかに行動できるようになることを,自分のサイエンスを実現するために肯定的に考えたい。前述の論文によれば,serendipity(思いがけないものの発見)が成功のために重要であったと多くの女性研究者が語っている。私も,様々な次元での努力を続ける中で,早くserendipityと出会いたいと思う。

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