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研究者の感性、もしくは、生物学研究と芸術的センス

2016.03.08
Vol.27 March - April

木戸屋 浩康大阪大学微生物病研究所

この度、第67回日本細胞生物学会大会にて若手最優秀発表賞という名誉と共に、伝統ある巻頭言への執筆という大変な仕事を仰せ付けられた。賞を勝ち取るために、選考会では並々ならぬ強敵と鎬を削ったわけだが、自分が選考されたのが間違いではないのかと思うほど秀逸な研究成果が報告されていた。だだ広い会場の最前列で同世代の研究者の発表を固唾を呑んで見守っていると、モヤモヤとした嫌な感情が沸き上がる。研究初心者が一度は通るイタい言動、「あいつは運が良いだけや」である。つまり、偶然にも良い研究テーマや素材に当たっただけで、誰が行っても同様の成果を出せただろうという嫉妬だ。これは、自分への弁明としては好ましいのであるが、残念ながら答えは否であろう。より良い成果を出せる可能性もあるが、振るわない可能性も大いにある。もし仮に同じような結論にたどり着けたとしても、そこへ至るアプローチ方法や結果が与えるインパクトなどは、研究者の個性が現れる部分であろうと思われる。これは、研究者の感性やセンスによるところで、芸術家が同じ題材でも全く異なる作品を出すことに似ているのではないかと思う。松浦彰先生の巻頭言(Vol.18 September(1))にもあったが、自然科学と芸術は志向の違いはあっても、ともに新しい世界の追求という共通した感覚を持っている。特に生物学においては、自然の美しさに憧れてその理由を求め突き詰めるという、芸術の一種であるという見方もできそうである。読者の中にも、完成された研究を為し得たときに美的享楽を感じた経験を持つ人も多いだろう。そう考えると、学会での研究発表というのは研究者のアーティスティックなセンスをさらけ出し、さらには内に秘めた生の声を吐き出す場であり、研究者の人となりを垣間見ることができる興味深い場である。

「血管の写真って、見た目がきれいですね」-学会でこのように声をかけられることがあるが、それは最高の褒め言葉と受けとっている。相手が女性であれば、「あなたの美しさには及びませんが」と返せるので、なおさら良い。私は院生時代から血管研究にとり憑かれているわけだが、その理由の一つとして血管構造が見せる美しさがある。血管の形態は樹木に例えられることが多いが、新しい血管枝はまさに発芽するように作られていく。実は、この発芽過程の理解は血管研究の抱える重要課題であり、血管の美しいデザインを決定するファクターは解っていない。生物学的な考え方としては、血管を構成する内皮細胞の多様性によるHierarchical modelや、周囲環境に依存した確率論的なStochastic modelが提唱されているが、生物形態の本質は効率性から導かれるのであろう。前述したように、血管は樹木や河川に似ているわけだが、それらの分岐は効率性を追求したデザインをとっており、数学的な法則に従っている。分岐の数はフィボナッチ数列に沿っており、断面に対する枝の角度は黄金角に従っていると説明できる。しかしながら、このような数理モデルによって幾何学的な幹枝を作図しても、ちっとも自然な美を感じることは無いであろう。足りない何かとは?―私の考える答えは「完璧すぎるから」である。実際の生物形態には、周辺の環境に適応するための恒常性による「ゆらぎ」が加わっている。自然界のデザインを決定するこの曖昧さは、決して偶然性や目に見えない力の所行ではなく、コンストラクタル法則によって決定される。さらには、DNAに書き込まれた細胞・分子機構も当然存在しており、その結果として、美を有するダイバーシティーが創出されるわけである。このような複雑性がもたらす「美しさ」こそが科学者を魅了し、その謎の探求へと駆り立てるのであろう。

このように、私たち研究者は、自然界が織りなす美しさに対して芸術的なセンスを持って取り組んでいると見立てられる。そして、その感性は、より上質なサイエンスに触れることで昇華していくのではないだろうか。私自身も、とある新学術領域の班会議に参加することで、科学センスが大きく変化することを実感したことがある。ピカソがキュビズムに目覚めて独特の抽象画を描き出すという変化を遂げたように、研究者として個性的な存在を目指したいものである。細胞生物学会にはそのチャンスが埋もれているはずである。

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