DNA・RNA関連
入江 賢児筑波大学大学院人間総合科学研究科(基礎医学系)分子細胞生物学グループ
「RNAの局在化」とは、核内で転写されたRNAが細胞内の特定の場所に存在する現象です。RNAの局在化により、細胞内では情報の偏りが生じ、細胞の極性が生まれます。生物の遺伝情報は、遺伝子の本体であるDNAからRNAに写し取られて発現します。そのため、RNAの局在化は、遺伝子発現を空間的に制御するための重要な現象です。図の説明 (1) 局在化するmRNAはジップコードと呼ばれる局在化シグナルをもっている。ジップコードはmRNAの3’非翻訳領域に見られることが多い。 (2) ジップコードにRNA結合タンパク質が結合する。 (3) ミオシンやキネシンなどの分子モーターがRNA局在に使われる。 (4) mRNAとRNA結合タンパク質は分子モーターとともに、巨大なRNA-タンパク質複合体を形成する。 (5) 輸送されるmRNAの翻訳は抑制されることが多いので、巨大なRNA-タンパク質複合体には翻訳の抑制因子が含まれる。 (6) RNA-タンパク質複合体はアクチンケーブルや微小管などの極性化した(方向性をもった)細胞骨格上を輸送される。 (7)と(8) 輸送されるmRNAは局在化部位に係留され、そこで局所的に翻訳される。
参考文献
1;Moving messages: the intracellular localization of mRNAs. St Johnston D. Nat Rev Mol Cell Biol. 2005 May;6(5):363-75.