細胞極性関連
鈴木 厚横浜市立大学大学院医学研究科 分子細胞生物学 医学部分子生物学教室
atypical PKC、および6種のPARタンパク質(PAR-1〜PAR-6)で構成される、種を超えて存在する普遍的細胞極性制御シグナル伝達システムを指す(線虫以外ではPAR-2に相当するタンパク質はいまだ同定されていない)。 細胞分化や幹細胞維持に必要な細胞の非対称分裂、さらには、分化を終えた上皮細胞や神経細胞の形態、機能の非対称化・極性化にも必須な機能を発揮している。多細胞生物の誕生とともに出現したシステムと考えられ、多細胞個体の複雑な形態形成と細胞特異的な機能獲得を可能にする上で、重要な役割をはたしてきたと推測される。 細胞内外からの極性シグナルに応答して、システム内のタンパク質間の相互作用にが生じ、細胞膜直下においてaPKC/PAR-3/PAR-6複合体とPAR-1が相互排除的に分布し、そのことによってまず、非対称な膜ドメインを確立される。その後に、それぞれの因子(特に、aPKC, およびPAR-1といったセリン・スレオニンキナーゼ)が細胞骨格系や細胞内輸送系を制御することによって細胞全体の非対称化が引き起されると考えられる。
参考文献
A. Suzuki & S. Ohno The PAR-aPKC system: lesson in polarity. J. Cell Sci. 119: 979-987 (2006)
鈴木 厚、大野茂男, 細胞工学 24(3)、 「aPKC/PARシステム:多細胞生物の細胞極性を普遍的にコントロールする分子制御装置」227-230, 秀潤社, 2005