米田 悦啓医薬基盤・健康・栄養研究所
大隅良典先生、ノーベル賞ご受賞、誠におめでとうございます。
私が、大隅先生のオートファジーのご研究の話を初めて聞かせていただきましたのは、今から、20年以上も前の、高遠シンポジウムでした。このシンポジウムは、日本細胞生物学会元会長の高橋泰常先生が、愛知がんセンターから、医学生物学研究所に移られてすぐに、日本でもアメリカのキーストンシンポジウムなどのように、研究者が1つのホテルに泊まり込んでお互いの研究の話を聞き、議論する場をつくるという趣旨で始められたと記憶しています。まだ、「次のスライドをお願いします」と発表者が言っていた時代でした。大隅先生が、オートファジーに関わると思われる酵母の変異株をたくさん見つけられ、その原因遺伝子を同定したというご講演でした。とにかく、「これはすごい!」と感動したのを憶えております。ご講演の後、「先生、とても感動しました。これから、いくらでもお仕事が発展しそうですね。」と、偉そうにお話しましたところ、「米田先生、それがねえ、どの遺伝子もこれまでに知られている遺伝子と全く似ていないから、どう研究したらいいのか困ってるんですよ。」とおっしゃられたのを鮮明に記憶しています。その後、大隅先生と多くのすばらしい共同研究者のご努力があり、次々とオートファジーの基本メカニズムが説き明かされて行き、この時に発見された遺伝子群が、今回のノーベル賞ご受賞の主たる業績になったのは申し上げるまでもありません。これらの研究の多くが、日本細胞生物学会の会員の力で成し遂げられましたことは、同じ学会員としてとても誇りに思います。また、そのご研究の進展をすぐ横から見ることができましたことは、大変幸せでもあります。
若い研究者が、大隅先生のご研究の流れに接し、研究は本当におもしろいと思ってもらえることを期待します。
大隅先生には、これからもますますお元気で、ご研究を続けて行かれますことを祈念致します。