水島 昇東京大学大学院医学系研究科
日本細胞生物学会会員のみなさま、新年あけましておめでとうございます。
昨今、AIの驚異的な浸透や、アルツハイマー病に対する抗体医薬をはじめとする医学の進歩など、科学と私たちの日常生活との結びつきがますます加速しています。一方で、基礎研究の分野でも引き続き新しい発見が続いています。Science誌の2024年の「Breakthrough of the Year」のひとつに、藻類での窒素固定能を持つオルガネラの発見いう細胞生物学の研究が選ばれました。今年も、革新的で興味深い多くの研究成果と巡り会えることを楽しみにしています。
昨年は、つくば市において岡田康志大会長のもとで盛大な年会が開催されました。プレナリーレクチャー講演者と直接交流できるウェルカムレセプション、若手最優秀発表賞審査の英語化とメインホールでの開催、学生優秀ポスター賞、イメージングコンテストなど、多くの初めての工夫が盛り込まれ、参加者の皆さまにとって非常に有益な大会になった思います。この場を借りて、岡田康志先生と組織委員の皆さまに改めて感謝申し上げます。また、昨年は前執行部の井垣達吏先生や小田裕香子先生方の尽力により、久しぶりに学会のホームページが刷新されました。今後、コンテンツも順次充実させていきたいと考えています。
話題が変わりますが、endoplasmic reticulumの日本語に相当する「小胞体」という名称に違和感を覚える方も少なくないかと思います。私自身も講義の際に「小胞ではないが小胞体と呼ばれている」と説明するたび、もどかしさを感じています。先日、大学2年生の講義で、小胞体、ゴルジ体、ペルオキシソームを蛍光標識した画像を見せ、「どれが小胞体か」と尋ねたところ、正しく小胞体のパターンを選べた学生はわずか4割でした(ゴルジ体とペルオキシソームを選択した学生がそれぞれ3割ずつ)。小胞体が網目状であることを知らない学生が半数以上いるということです。やはり「小胞体」という名称が「小胞」を連想させるので誤解を招いているように思われます。世界的には(中国も含めて)「endoplasmic reticulum」に相当する言葉が使われています(endoplasmic(内形質)の部分には議論の余地があるかもしれませんが)。
そこで、昨年10月の理事会において、小胞体の名称を再検討する委員会を設置することとしました。その後、いくつかの他の学会にもお声がけして、学会を越えた合同の委員会を立ち上げました。現在はまだ議論を始めたばかりであり、名称を変更するかどうかも決めたわけではありません。変更となる場合には一定の混乱を伴う可能性があることも考慮しつつ、50年後の高校生や大学生にとって最善となる選択を模索していきたいと思います。ご意見やアイデアがありましたら、学会事務局や私までお寄せいただければ幸いです。
最後になりますが、2025年が会員の皆さまにとって実り多き一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。