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細胞生物学に出会ったころ

2007.12.04
Vol.18 October & November

小林 俊秀理化学研究所

 何を書いてよいかわからないので、自分自身の事を書こうと思う。私は工学部を卒業して大学院は農学部と薬学部で過ごした。どうして大学院を受かったのかはわからないが、農芸化学の大学院に入ったときはホスファチジルコリンはもちろん、プラスミドという言葉も知らなかった。薬学部に移ったときはアゴニストという言葉を知らなかった。免疫というものを教わったことがなかった。そういうなかで、わからない言葉に翻弄されているうちに学生時代は終わってしまった。幸いにも良き恩師、先輩、同僚、にめぐり合えたおかげで脂質の生化学のさわりは知ることができた。

 就職して数年、脂質の生化学と生物物理を我流で勉強しているうちに米国に行く機会を得た。米国では「脂質の細胞生物学」をやっていた。脂質の細胞生物学というのは、私の理解では、今も昔も脂質を見る、ということだと思う。そこでは脂質の脂肪酸の1本を蛍光脂肪酸に変え、顕微鏡の下で脂質の動態を直接見る、という実験をやっていた。この実験室では脂質の扱いのディーテイルは誰よりも私が知っていた。脂質を知っていたら脂質の脂肪酸に蛍光をつけたら物性がどう変わるかはやる前からわかる。けれどもその欠点を補ってなお余りある新しい発見が研究室からは発表されていた。研究室を主宰していたのは物理化学者だった。いまでも議論することがあるけれども、わたしが実験のデザインの細かい点を、それでも理詰めに問いただすと「でも面白いだろう?」というのが彼の答えである。この頃(1980年代の半ばから後半)脂質の細胞生物学をやっていたのは世界でも限られた研究室だったと思う。

 そのあと西ドイツでふたたび細胞生物学を学ぶ機会に恵まれた。今度はフィンランド人の医者の研究室に行った。この人は「分子生物学は重要である。それは細胞生物学に貢献するからである」という筋金入りの細胞生物学者だった。彼は脂質のドメイン形成が膜輸送に重要な役割を果たしている、というアイデアを出していた。私がいたとき研究室で脂質のサンプルを調製する器具はなかった。脂質の専門家だったらドメイン形成がそんなに簡単なものではないことがわかる。そもそも裏と表の脂質の非対称性をどう説明するのか、といった問題もある。にもかかわらずこのアイデアは「脂質ラフト」として広く知られるようになった。彼とも議論することがあるが、「アイデアを証明することも大事だが、検証することのできる仮説をだすことも同じくらい重要なのだ」というのが彼の持論である。

 以上が私にとっての限られた細胞生物学の経験である。私のはじめての欧米での経験と重なってしまっているため、これは細胞生物学を学んだのか欧米の科学を学んだのか私には良くわからない。明らかに蛍光脂質の動態も脂質ラフトも脂質の専門家の目で見直す必要があり、いまはその時期に来ている。しかしそういう代償を払ってもなお、失敗を恐れないで実験をしたりアイデアを出してみる、といったことが思わぬ発見につながる、ということを見てきたような気がする。

 このような行き方が正しいかどうかは議論のあるところかも知れない。これが細胞生物学だと言うつもりもなく、あくまで一個人の経験である。うまく言えないけれどこれは自分の知識より興味を優先する、といった選択を迫られるやり方でもある。私自身はというと、そういう行き方を検証するところから自分自身をスタートさせているようなところがあるように思う。しかし、みんながみんなこうでは困るかも知れないが、若い人のなかにこういう人が出てきても面白いのではないかと思う。こういうことをやるのは徒労も多いし精神的にもタフでなくては勤まらない。畑違いの勉強をする必要もあるかもしれない。実際、部屋の人間が全部こうだったらと思うとぞっとする。それでもなおちょっとぞっとしてみたい気もするのである。

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