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サイエンスの伝統

2008.04.04
Vol.19 March

中村 暢宏金沢大学大学院自然科学研究科

 近代科学発祥の地・イギリスの土を喜び勇んで踏んだのは、もう15年も前のことだ。夜のロンドンの街を、おっかなびっくりスーツケースを転がして歩いた。行き先はImperial Cancer Research FundのLincoln’s Inn Fields研究所。大英博物館やロイヤル・オペラハウスまで歩いて10分かからないという街の中心部に位置していた。私はこの研究所で3年半を過ごしたのだが、当時インターネットはつながったばかりで、Webブラウザも普及しておらず、もう日本の情報は簡単に手に入らなかった。「外国へきた!」とひしひしと実感した。研究室のメンバーはポスドク8人と技官が3人、学生3人。ほとんどが外人部隊で、国籍はイスラエル、フランス、スイス、スウェーデン、ドイツ、シンガポール、中国そして日本。生粋のEnglishというとボスとポスドク一人だけ。あとはスコットランド人やポーランド系のウェールズ人、インド系イギリス人などのBritish(EnglishとBritishは違うのである)だった。様々なアクセントの英語が飛び交う研究室の雰囲気に面食らったが、早く研究室の仲間に入れてもらおうと、お茶の時間や週末の映画、パーティーなどには積極的に参加して必死で英語力を磨いた。

 そう、お茶の時間。今でもそうだと思うが、イギリスには朝10時からと昼3時から、職場の仲間とともに小一時間お茶を飲みながら休憩する習慣があった。話題は、サイエンス以外に日常生活、時事問題、政治経済、文化と多伎にわたる。最初はまったくチンプンカンプンで疎外感を感じ続けたが、数ヶ月するとわからなくても気にならなくなってきて、ニコニコ座って耳を澄ませていることができるようになった。継続は力なり。2年目にしてようやくどんな話題を話しているのかだんだんわかるようになってきたし、3年目には知った話題なら少し口を挟めるようになってきた。痛感したのは自分の知識・話題の乏しさだ。それで日本ではどうなの?とか、君はどう考えるの?と話題を振られたときに答えられずに悔しい思いをしたことは数知れない。

 ある朝、ラボにいくと、となりのベンチのポスドクが日本で大変な事があったらしいよと教えてくれた。1995年1月17日。阪神淡路大震災である。理解できるニュース・ソースはテレビぐらいしかなく、詳しい情報が入らない。その晩、BBCを見ていると、崩れ落ちた神社の画面が映って、京都でも大きな被害と言っているようだ。京都にある私の実家は大丈夫か?だが、電話をしてもつながらない。この時最も威力を発揮したのが、インターネットだった。まだ、日本の大手新聞社のニュースサイトはなく、日本から届く電子メールがリアルタイムのニュース・ソースだった。私は、イギリス在住日本人のためのメーリングリストに加入していたので、同じリストに参加している日本在住者から続々と情報が入った。京都はほとんど被害がなかったらしい。しかし、神戸とのネット回線が切れているらしく連絡がとれない。どうも神戸が最も被害が大きいらしい。実家と電話連絡がとれたのは数日経ってからで、その後だんだんと被害の大きさが明らかになってきたのだった。

 1997年の春に帰国。そして10年以上の歳月が流れた。インターネットと携帯電話の普及は情報革命をもたらし、一般生活のみならずサイエンスのスタイルをもすっかり変えてしまった。顕微鏡写真の現像に数日待つ必要はもうない。論文投稿や学会発表に写真やスライドは必要なくなった。さらば、リバーサルフィルムよ!ブルースライドよ!さらばカルーセルよ!ネットで論文を投稿し、それが即日編集部に届けられる時代である。国際郵便のタイムラグからも解放された。論文やデータの収集からプレゼン・論文投稿まで「便利になった」としみじみ思う。

 話が逸れてしまった。
研究所にいた我々留学生は、英語の問題もあって、やはりボスをはじめとするnative speakerとの議論にはついていけない部分が多かった。そのかわり、ハードワークを得意としていたし、それでカバーしていた。それに比べて、英国人大学院生やポスドクはいつまでたっても実験を始めない。どっかから訳の分からない論文など持ってきて、ああでもない、こうでもないと暇があったら議論しているのだ。議論している暇があれば実験した方が早いのにねと、日本人同士で揶揄したものだが、それにしては、目を見張るような実績を楽々とあげていくのである。実験をする前に、徹底的に議論し思考実験を行うこと、それが成功の秘訣なのだとだんだん判ってきた。英国人に言わせれば、周到な議論で解決できる問題や排除できる可能性をわざわざ実験で検証するのは時間と資源の無駄そのものだというところか。

 ある日、我ながら秀逸な可能性を考えついたと思ってボスに議論をいどんだ事がある。詳細は忘れてしまったが、2つの説が真っ向から対立していた当時の議論で、実はその折衷が真実の姿ではないか、といったものであったと思う。不毛な議論に終止符を打つ画期的な可能性だと私は考えた。だが、私の論はものの見事に一蹴されたのである。「君、検証不可能な可能性は考えるだけ無駄だよ。科学というものは、検証可能な仮説を設定し、それを証明していくことで前進するものだよ。よしんばその仮説が真理ではなくともね。」徹底したプラグマティズムでとでも言おうか。イギリスにはやはりサイエンスの伝統があったと強く思った。

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