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恩師の背中

2017.08.25
Vol.28 September - December

水野 健作東北大学大学院生命科学研究科

私の恩師、松尾壽之先生は、視床下部ホルモンLH-RHの構造決定でシャリーのノーベル賞受賞に貢献されたことや、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の発見で有名な先生です。私は大阪大学蛋白研で学生として研究を始めた時に、松尾先生にはじめてお会いしました。当時、松尾先生は確か40歳を越えて研究生をされていたのではないかと思います。LH-RHの仕事のあとやりたい研究があって帰国したが雇ってくれるところがなくて居候している、と仰っていましたが、生き方そのものがドラマティックですね。その後、松尾先生が宮崎医科大学で研究室を立ち上げられたとき、一緒についていきました。松尾先生は教訓めいたことはほとんど口にしない先生ですが、私は先生の研究スタイルや生き方に大きな影響を受けたように思います。研究者は恩師の背中を見て育つといわれますが、ここでは私の恩師である松尾先生の後ろ姿を紹介して、研究者のあり方について考えてみたいと思います。

「自由な雰囲気」松尾先生の研究室は、自由な雰囲気に溢れていました。研究の前では学生も教授も平等であり、立場に関わらず自由闊達に議論できることが大事であるという考えがあったのだと思います。実験の現場にいる若い人こそが大きな発見を生み出す研究の最前線にいる、若い人の自由な発想こそが既存の常識を打ち破る突破口になる、だから、若い人がのびのびと研究に打ち込める自由な研究環境を作ろうとされていたのだと思います。指導者のアイデアだけでは限界があります。それ以上のものを生み出すためには、年齢や立場を超えた自由な議論やアイデアの交換が欠かせないと思われます。研究環境は指導者の考え方で大きく変わるのではないでしょうか。

「やりたいことだけをやる」松尾先生は、外見では真面目にてきぱきと仕事をするような印象があるかもしれませんが、実際のところ、普段はそうでもありませんでした。先生は好きなことや本当に大事だと思った場合にだけ、驚くべき集中力を発揮するのです。例えば、松尾先生は合成が大好きで、私達が新規ペプチドを単離、構造決定した時には、先生自ら徹夜でペプチドを合成するのです。そして、天然物と合成品の物性や活性が一致してはじめて、仕事の完成となりました。気に入った論文はよく徹夜で完成させていました。一方で、総説の原稿などでは、「火事場の馬鹿力」を信じて、〆切り間際まで書き始めないことが多かったように思います。やりたいことだけをやる(やりたくないことはしない)、この流儀が実は優れた成果を生み出す原動力なのかも知れません。しかし、凡人にとってはこれに徹することはなかなか難しいことです。

「BBRC」宮崎医大で書かれた論文の多くは、BBRCに発表されました。LH-RHの仕事がそうであったように、ペプチドの構造決定では、何よりも速報性が重要であるという思いがあったのだと思います。時々Natureにも発表されましたが、本当に重要な最初の論文はBBRCに発表されました。いい仕事なら世界は認めてくれるという内容に対する確固たる自信と自負があったのではないでしょうか。

「感性」研究者にとって研究テーマを決めることは最も重要なことと思われます。どのようにして研究テーマを決めるかは、研究者の感性に従うしかありません。松尾先生は、有機化学者として出発され、ラセミ化の研究からペプチドのC末端アミノ酸決定法を開発され、その手法を用いてLH-RHの構造を決定され、さらにオピオイドペプチドやANPなど脳神経系や循環器系で作用する多くのペプチドホルモンを発見されました。有機化学から生化学、医学と広い領域にわたって研究を展開されてきましたが、そこには誰もが納得できるストーリー性が感じられます。研究者としての感性を磨くのに王道はないと思いますが、先生の歩まれた道を辿ると、有機化学者としての確固たる基盤、新しい分野に飛び込んでいく思い切りの良さ、研究の将来性・発展性に対する嗅覚など、私たちが研究テーマを決めていく上で大いに参考になると思われます。

以上、松尾先生の研究スタイルについて私の印象を述べました。そこからは、研究者はもっと自由で、もっとおおらかにやっていいのだ、というメッセージがあるように思えます。松尾先生は89歳になられて益々お元気です。松尾先生との出会いが、私の研究者としての原点です。研究面でも教育面でも先生の足下にも及ばないのですが、その背中を見て育ったものの一人として、松尾先生の自由でおおらかな研究者精神を少しでも次の世代に伝えていければと思います。

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