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天動説

1993.10.01
Vol.4 October

江橋 節郎岡崎国立共同研究機構生理学研究所

 近代物理学はコペルニクス(1473〜1543)による地動説の確立によって始まったとされている。ギリシャの昔から地動説を唱えた学者もなかったではないが、天動説はアリストテレスを先頭とするギリシャ碩学の権威と中世教会の庇護のもとに、ルネッサンスに至るまで世界を支配したのであった。

 昔私が医学部の学生であった頃は、病人、特に老人と小児には、血管の中に液体を入れて心臓に負担をかけてはいけないと、まことしやかに教えられたものである。そこで液体補給が必要な場合には、大量のリンゲル液を皮下に注入して、患者をヒーヒー泣かせていた。しかし、第二次世界大戦の修羅場の中で、輸液の驚異的な効果が確認された。現在の医療、特に老人医療には、輸液は絶対不可欠の処置である。正にコペルニクス的転回であった。

 科学の進歩は、驚天動地の天才的発想によるよりも、伝統に守られた定説の中に、『天動説』を嗅ぎとることから始まることが少なくない。ギリシャ哲学の中心には、賢人の考えることが真理であるというアプリオリな理解があり、哲人独裁者と被支配階級を峻別し、奴隷制度を容認したプラトンの国家観にその典型を見ることができる。このように極端に貴族主義的な哲人政治は天動説の温床であり、到底科学の精神とは相容れないが、そうかといって庶民の考え、つまり常識が正しいということでもない。科学には民主主義も通用しないのである。

 考えてみれば、優れた科学者とは、傲慢な権力者と素朴な庶民とがともに信じている『天動説』にけちをつけて、蔭でほくそ笑んでいる嫌らしい人種である。こういう類の人間は、学問は地動説でも、人柄の方は天動説的な人が多い。ニュートン然り、ガリレイ然り(但し御本尊のコペルニクスは思慮深い紳士だったそうである)。

 元日の御来光を地動説でお迎えするのは、よほどのひねくれ者である。つまり、天動説は人々の心に実感として生き残っている。ところが細胞説の確立は、ロマンチックな前成説を根絶やしにし、親指姫や一寸法師をこの世から御伽の国へと完全追放してしまった。生命科学におけるコペルニクス転回は、天文物理学におけるよりも冷酷だったようである。近頃、独創性豊かな天才を生み出す教育(つまり鳶に鷹を産めということ)をという声が喧しい。そんな試みが成功する筈もないが、自称天才を作ることは可能である。そういった天動説的人間が我々の回りを埋めることになったら、世の中さぞ住み難くなることであろう。生命というファジーで多彩な対象を扱う領域ではそういう輩がのさばり易い。生物学というものがいろいろな意味で厳しい学問になってゆくことだけは間違いないようである。

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