アクチン・ミオシン
大橋 一正東北大学大学院生命科学研究科
真菌の毒素から単離された低分子化合物でアクチンの重合阻害剤。細胞膜透過性である。サイトカラシンB等の誘導体が複数存在する。 サイトカラシンDの作用は、アクチン繊維のプラス端に高い親和性で結合し(kd値:2 nM)、新たな重合を阻害するものである。また、弱く単量体や2量体のアクチンに結合する(kd値:2.6-17μM, Mg2+存在下)。繊維芽細胞に対して作用させた場合は、細胞内F-アクチンの脱重合を促進しないことが報告されている。これに対し、活性化した血小板に作用させた場合には、血小板内のF-アクチンが脱重合することが報告されている。これまでの報告を総合すると、定常状態の細胞に対してサイトカラシンDを作用させた場合、細胞内のF-アクチンの脱重合は促進されないと考えられる。細胞内ではアクチン線維が重合と脱重合の平衡状態にあるため、サイトカラシンDのアクチンのプラス端キャッピング活性だけではこの現象を説明できない。アクチンのプラス端キャッピング活性の他に何らかのアクチン線維の脱重合を抑制する作用があると考えられる。