木内 泰東北大学大学院生命科学研究科
ほとんどの真核細胞でアクチンは最も大量に存在するタンパク質で、その濃度は数百μMに達する。単量体アクチン(G-アクチン)とアクチン線維(F-アクチン)はおよそ1対1の比率で存在する。G-アクチンが重合しないで存在できる臨界濃度は0.1μMと低く、細胞質のG-アクチンはサイモシンβ4ファミリーを中心とする隔離タンパク質が結合することで重合が抑制されている。G-アクチンは、ADF/コフィリンによるF-アクチンの切断・脱重合によって細胞質にADP-G-アクチンとして放出され、プロフィリンによってADPがATPに交換されATP-G-アクチンとなり、再び重合に使われる。細胞質で他のタンパク質と結合していないG-アクチンやプロフィリンと結合しているG-アクチンは重合可能で、それらの濃度は細胞内でのアクチン重合速度を決定する重要な因子である。細胞質G-アクチンの大半は重合できないサイモシンβ4結合型G-アクチンであり、G-アクチンとサイモシンβ4が結合・解離を繰り返す平衡状態にある。細胞が外的刺激を受けアクチン重合が促進された場合、この平衡は解離側に動いて、大量に存在するサイモシンβ4結合型G-アクチンプールからG-アクチンが供給され、アクチン重合に使われる。このように細胞は、G-アクチンを高い濃度に保つことで刺激に応じた素早いアクチン重合を引き起こすことができる。最近開発されたs-FDAP法によって、細胞内でのG-アクチン濃度の経時的、空間的な変化が詳細に測定できるようになった。
参考文献
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