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松田 道行京都大学大学院生命科学研究科 生体制御学分野
FRETとはこの現象の発見者の名前にちなんだFörster Resonance Energy Transferの略である。しかし、最近ではFluorescence Resonance Energy Transferの略と書いてある書籍が多く、蛍光共鳴エネルギー移動と邦訳されることが多い。FRETは、光子により励起されたドナー蛍光分子からごく近傍にあるアクセプター分子へエネルギーが共鳴移動する現象のことである。FRETの効率は、【1】蛍光発色団間の距離、【2】遷移モーメントの向き、【3】ドナー分子の蛍光波長域とアクセプター分子の吸光波長域の重なり、により主に規定される(1)。もっとも一般的なFRETの観察法はドナー蛍光の減少とアクセプター蛍光の増加を測定するが、厳密には、FRETはドナー分子の蛍光寿命を測定して定量される。FRETが蛍光タンパク質間でも観察されることを利用して、カルシウムを始めとするイオン、タンパク質リン酸化酵素、低分子量GTP結合タンパク質など、非常に多くの細胞内情報伝達分子に対するバイオセンサーが開発されている(2)。創薬においては、非常に長い蛍光寿命を持つユーロピウム(Eu)をドナーに用いることにより高いシグナルノイズ比のアッセー系が開発されている。
参考文献
(1) Current Opinion Chem. Biol. 10:409-416, 2006.
(2) Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 51:337-358, 2010.