渡邊 直樹東北大学 大学院生命科学研究科
アクチンは筋肉の線維性タンパク質であるが、筋細胞以外のほとんどの真核細胞にも存在し、表層の細胞骨格ネットワークの主成分を成している。アクチンは単量体、もしくは、それが数珠状につながった線維のいずれかの状態で存在する。細胞が運動するときや外来の刺激に応答し変形する際、単量体アクチンが線維に変換するアクチン重合が盛んにおきる。アクチン重合は、線維を形成する重合核形成(nucleation)と線維端に単量体が次々と付加する伸長(elongation)の2つのステップに分けることができる。重合核形成のステップでは、単量体アクチンが2量体や3量体を形成しては解離することを繰り返すため、なかなか線維が形成されない。この重合核形成を促進する分子群として、Arp2/3複合体、フォルミンファミリータンパク質、SpireなどWH2ドメインをもつものが同定されてきた。これらの重合核形成促進因子は、Rhoファミリー低分子量Gタンパク質を中心とした細胞内情報伝達機構によって活性化される。アクチン伸長は、フォルミンファミリーやVASPによって維持、もしくは加速され、逆にキャッピングプロテイン、ゲルソリンなどによって阻害される。これらの機構により細胞内のアクチン重合のタイミングは調整され、細胞表層の構造をリモデリングするとともに、細胞先端の仮足では重合端を外側に向けながら細胞膜を押す力を発生する。
参考文献
Pollard, T. D., Blanchoin, L., Mullins, R. D. (2000) Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 29: 545-576.
Pollard, T. D., Cooper, J. A. (2009) Science 326:1208-1212.