渡邊 直樹東北大学 大学院生命科学研究科
Waterman-StorerとSalmonがみいだした細胞骨格動態の蛍光顕微鏡撮影法。1996年、彼らが蛍光標識チュブリンを細胞にマイクロインジェクションしていたところ、低濃度で標識された細胞では、微小管がまだら(speckled)にみえ、微小管の軸方向への移動が可視化されたことの発見に端を発する。光の回折限界である0.2-0.3 ミクロンの領域に2-8個の蛍光標識が存在する場合、その数の確率的ばらつきから蛍光の強弱が生ずるが、それを可視化できる高感度の冷却CCDカメラが普及したことが本法の発見につながった。当初は、蛍光標識体のフォトブリーチング法よりも長時間にわたり、より高い時空間解像度で、微小管やアクチンネットワークの細胞内移動速度や方向を可視化する方法として利用された。後に、更に低密度の標識体をもちいて、細胞内アクチンを1分子ごとに可視化する単分子スペックル顕微鏡に発展し、アクチン線維の重合・脱重合やその制御分子の細胞内動態の可視化解析に用いられた。また、密度の高い標識の動態をコンピューター解析することで、細胞骨格分子や細胞接着分子の動態の全体像を迅速にとらえるqFSM法(quantitative Fluorescent Speckle Microscopy)がDanuserらによって開発された。(qFSM法については、結果に部分的にエラーが含まれる可能性も指摘されている。)
参考文献
Salmon, E. D., Waterman, C. M. (2011) Mol. Biol. Cell. 22: 3940-3942.
Waterman-Storer, C. M., Salmon, E. D. (1997) J. Cell Biol. 139: 417-434.
Watanabe, N., Mitchison, T. J. (2002) Science 295: 1083-1086.
Danuser, G., Waterman-Storer. C. M. (2006) Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 35: 361-387.
Vallotton, P., Small, J. V. (2009) J Cell Sci. 122: 1955-1998.