鈴木 厚横浜市立大学大学院医学研究科
上皮細胞はその特有の機能を果たす必要性から、細胞周囲を一周取り囲む連続的な接着構造を2種類—密着結合(tight junction)、および接着帯(adherens junction)—を発達させている。これらの接着構造の発達の素過程は、confluentな単層の培養上皮細胞を一部、針等でスクラッチし、その傷が埋まる過程(wound healing)をライブセルイメージングで観察する実験などを通じて研究されてきた。 これまでに、上皮細胞においても、線維芽細胞にも見られるような点状の接着構造(dot-like adherens junction)が最初に形成され、それが次第に融合し、最終的に2種に分化した連続的な接着構造に発達することが明らかとされている。ただ上皮細胞では、この初期接着構造にE-cadherinだけでなく、将来タイトジャンクションを構成するclaudin, occludin, JAMなどの膜タンパク質がすべてrecruitされてくるという特徴がある。 この発達過程においては、初期の点状接着構造から細胞内部に伸長するアクチン線維、および、上皮細胞特有にみられる周辺部(peripheral)の環状のアクトミオシン線維の求心性の収縮力が重要な役割を果たしていることが分かっている。さらに、Rho, Rac, alpha-caten、さらには極性制御因子であるPAR-aPKCシステムもこの過程の進行に必須な役割をしている。ただ、いかなる分子機構でこの過程が進行するのかという点については、まだ多くが不明である。
参考文献
Yonemura, S.et al. J.C.S. 108: 127-142 (1995); Vasioukhin, V. et al. Cell 100: 209-219 (2000);Vaezi, A et al. Dev.Cell 3:367-381 (2002);Suzuki et al. J.C.S. 115: 3565-3573 (2002); Kishikawa, M. et al. J.C.S. 121: 2481-2492 (2008);Baum B. & Georgiou.M. J.C.B. 192: 907-917 (2011)