一般社団法人
日本細胞生物学会Japan Society for Cell Biology

細胞生物学用語集【な行】

【な】

内腔
【lumen】
中野 明彦
東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻
「ないこう」と読むのが正しいが「ないくう」でも通じる。英語ではlumen。細胞小器官のさらに内側の空間を指す。細胞質(cytoplasm)と膜を隔てて反対側,つまりトポロジーの上では細胞外と同等であり,実際,膜交通によって連絡可能である。それを意識して,exoplasmicあるいはectoplasmic spaceと呼ぶこともある。ただし,ectoplasmと言うとオカルト映画のおどろおどろしいものと同じになるので注意。ミトコンドリアや葉緑体など,細胞内共生に由来する複膜系の細胞小器官では,外膜と内膜に挟まれた膜間腔(intermembrane space)が同じトポロジーとなる。

【に】

二光子励起顕微鏡法(多光子励起顕微鏡法)
【Two-photon excitation microscopy, multi-photon excitation microscopy】
松田 道行
京都大学大学院生命科学研究科 生体制御学分野
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 二光子励起顕微鏡法とは、二光子吸収過程により分子を励起し、その蛍光を観察する顕微鏡法である。三光子励起も報告されているので多光子顕微鏡という用語を使う場合も多い。一分子が同時に二つの光子により励起される確率は自然界ではゼロといってよく、フェムト秒超短パルス高出力レーザが開発されて初めてこの現象が観察されるようになった。光密度が二光子励起を誘導するまでに高くできるのはレンズの焦点のみであるため、光路上の焦点以外に存在する分子は励起されない。これにより、二光子顕微鏡法では背景光がほぼなくなり、高いシグナルノイズ比が達成される。また、赤外レーザを使うため、組織透過性が高い。動作距離の長いレンズや、散乱を減少させる方法の開発により、脳組織では数mm程度の深部まで蛍光観察できるようになっている。近年、生きた生物で様々な細胞の動きや機能をリアルタイムに観察するintravital imagingという分野が発展しているが、その牽引力となっている技術である(1)。
参考文献

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